イメージ 1

 サブプライム問題直後に著された本。恐慌前夜の状況に関しては 副島隆彦さん や 朝倉慶さん の著作などに書かれていることなので、今さら読む必要もない本だけれど、古書店の105円コーナーにあったから、何か一つ違う発見があれば、と思い読んでみた。
 タイトルは「恐慌に備えてキンを購入し、カネを生もう」という意味。確かに2008年以降キン価格は上昇を続けているけれど、世界恐慌(国家連鎖破綻)は回避されたのである。これを仕組んでいた勢力は駆逐されたのだから。2008年7月初版。

 

 

【ノーベル経済学賞・受賞撤回】
 1998年の破綻後、世界中の話題になったのは、このドリームチームに二人のノーベル賞受賞者がいたことだった。マイロン・ショールズ(スタンフォード大学教授)とロバート・マートン(ハーバード・ビジネススクール教授)の二人である。1997年、「ブラック・ショールズの公式」で知られるデリバティブ価格付け理論でノーベル経済学賞を受けている(余談だが、LTCM破綻後、ノーベル賞選考委員会はその名誉にかけて二人に対する受賞撤回を表明し、それどころかノーベル経済学賞自体の廃止の声さえ上がった)。(p.78)
 「ノーベル賞受賞学者でも運用に失敗する」という話は、あっちこっちに書かれていたけれど、受賞が撤回されていたって知らなかった。

 

 

【無税償却】
 日本のバブル崩壊後に取られた方法
 なかなか不良債権を処理しようとしない金融機関に対して、大蔵省は「ウルトラC」の不良債権処理策を考えだした。すなわち、「無税償却」である。無税償却を使えば、貸出先が破綻していないのに損金処理できるため、金融機関はいくらでも利益操作できる。(p.105)
 ありえない方法だけど、「国が赤字を膨らまして穴埋めする代わりに、税金取らないからちゃんと処理してよ」、ということだろう。
 このおかげで、消えた税金(金融機関が納めなかった税金)がどれだけあったか? 15年間で39兆円である。(p.106)
 税収減だけではない。この期間に景気浮揚策として、さらに130兆円が市場に追加投入されていたという。

 

 

【インドの主要輸出品】
 NASA(米航空宇宙局)の頭脳の多くはインド人といわれている。実際、インドのITソフト・サービスの輸出額は30%近い成長を遂げるなど、年間輸出額にして400億ドルにも達している。まさに、インドの主要輸出品は「頭脳」であり、「IT技術者」といってもいいくらいの状況だ。(p.129)
 今日の日本でも、切れ者のインド人IT技術者がいっぱい働いている。
   《参照》   『インドの科学者』 三上喜貴 (岩波書店)
             【論理性に秀でたサンスクリット語】
             【筋道を立てる力と高度な計算力】

 

 

【中国の環境汚染】
 中国環境保護省の潘岳氏は、「毎年200万人を超えるがんによる死亡のうち、70%は公害による病気に起因すると専門家たちは信じている」と語っている。もちろん、この数字は中国政府としては隠しておきたい「不都合な真実」である。
 「オランダ環境影響評価機関」によると、中国は、2006年にはすでに二酸化端度排出量でアメリカを抜いて世界一になっている。こちらは、なんとも不名誉な世界一である。とくに海洋汚染は想像を絶する酷さで、遼東湾、渤海湾、長江口、杭州湾をはじめ、中国の近隣海域の55%が汚染されている。・・・(中略)・・・。地元・天津の中国人は、目の前の渤海湾で獲れた魚介類は口にしない、というけれども、どの海も五十歩百歩なのだ。(p.134-135)
   《参照》   『中国「反日」の末路』 長谷川慶太郎 (東洋経済新報社)
             【野放しの公害と環境の悪化】

 

 

【湾岸諸国の文化】
 湾岸諸国には、「働くことは恥だ」という文化が巣食っている。「勤労」が国民の義務であると憲法でうたわれている日本とは、雲泥の差である。 ・・・(中略)・・・ 。
「UAE(アラブ首長国連邦)の若者を雇うなんて、これほど金の無駄使いはない」
 と語るのは、ドバイの経営者である。
 ほとんどの国では、成功を収めたければ額に汗して働くか、脳のしわに汗をかいて働くものである。ところが、サウジ、オマーン同様、この国も「働くことは恥」という文化に毒されているのだ。とくに生まれたときから豊かだった10~20代の世代は、油(の価値)がなくなったら砂漠での生活に戻らねばならない、という危機感がまったくない。もともと、真珠の採集でなんとか食べていた国である。1960年代までは学校の病院もなかった。「神の思し召し」で、たまたま石油に恵まれていただけの国なのだ。(p.166-167)
 最近、テレビの旅番組でUAEの一般家庭内の様子を放映していたけれど、日本で言えば「超セレブ」という感じの室内状況だった。世界中のマネーが流入する地域では、働かずともそのような生活が普通にできてしまうのである。
 しかしながら、下記リンクのように、国家ごとの盛衰事例などいくらでもある。
   《参照》   『アホウドリの糞でできた国』 吉田靖 (アスペクト)
 今日の湾岸諸国は、日本などの技術を導入して、石油以外のエネルギーで国を運営する準備を始めてもいる。

 

<了>
 

  松藤民輔・著の読書記録

     『マネーの未来、あるいは恐慌という錬金術』

     『日本経済の夜明けを告げる』