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 ファンタジー小説なのかと思って手にしたら、太平洋の赤道付近に実在する島国(ナウル共和国)の実話だった。

 

 

【燐鉱石の塊の国】
 アホウドリの糞は年月を経ると燐鉱石になります。 島の地面は燐鉱石の塊でした。(p.10)
 この燐鉱石をめぐって、歴史上、ドイツ、イギリス、オーストラリア、ニュージランド、そして日本が一時期、支配力を行使した。

 

 

【独立までの経緯】
 日本軍はナウル人1200名をトラック島に送ってしまいます。
 1945年に日本軍は帰って行きました。
 翌年、生き残った737名のナウル人がトラック島から戻ってきます。1月31日です。
 あらまあ、こんなところで日本軍は、強制連行していたらしい。
 第二次大戦後は、英連邦3国がナウルの所有者になった。
 1968年、「ナウル共和国」 は独立したのです。せっかくなので1月31日を独立記念日と決めました。
 独立以前のナウル人は、燐鉱石を採掘しても、その富の5%くらいしか手にできなかった。

 

 

【夢の始まり】
 ナウル国民の夢のような生活が始まりました。
 それまで、ナウル人が食べていたのは、島で取れるココナツの実や魚。これが、外国方輸入した缶詰に変わりました。飲み水もミネラルウォーターを輸入するようになりました。(p.28)

 ナウル共和国に税金はありません。教育、病院は無料。電気代もタダ。結婚すると、政府が2LDKの新居を提供してくれます。つらくキビシイ掘削作業を自分でやる必要もありませんでした。周辺の島からやってくる出稼ぎ労働者にまかせます。(p.30)
 働かなくても全員が食べてゆける夢の島国。国民はみんな肥満になり、糖尿病が深刻な問題になった。
 周囲が19kmしかないアホウドリの糞で出来た島国。やがて、燐鉱石の枯渇する時が来る。
 夢の国民生活はおよそ40年間。2000年頃には、ほぼ枯渇したらしい。
 国家資金運用として投資しておいたものは、ことごとく失敗したらしい。
 そんでもって、その後も、いろんな方法を考え、実行した。

 

 

【国家財政(資金調達)】
 驚くべき作戦を決行します。まず、国籍の販売です。2万5000米ドルの現金と簡単な面接だけで、パスポートが取得できるというもの。結婚だとか、言葉、住んでいる場所なんて細かいことは一切不問にしました。
 もう一つの戦略は銀行でした。インターネットを使ったナウル銀行です。ものすごく繁盛しました。なぜなら、この国にはもともと税金がありません。税金対策をしたいお金持ちには好都合なのです。しかも国籍まで簡単に取れるので、ブラックな事情を抱える人やワケあり資金を隠したい人にも大好評でした。(p.56-58)

 当然、他の国は激怒。ロシアは、「わが国のマフィアの金が1年間だけで700億米ドルもナウルに流れた」 と非難の声明を出します。が、ナウル政府はどこ吹く風。知らん顔を決め込んでいました。
 しかし、こんな手が通用したのは2001年9月11日まででした。(p.62)
 その後は、独立以前に掘った燐鉱石の代金をオーストラリア政府に払わせたり、難民受け入れを条件に資金提供を受けたり、ホテルを売却したり、民間企業から資金を借り入れて失敗したり、いろいろすったもんだをしたらしい。
 バタバタし続けたナウル政府ですが、「オーストラリア政府主導のもと、財政再建に向けて進む」 という方向が定まったようです。ようやく。(p.121)

 

 

【もう一つの本当の危機】
 ナウル共和国の元大統領クロドゥマール氏は、1997年2月に来日しています。
「この会議が失敗すれば、わが国は海に沈む」 
 これは地球温暖化防止京都会議での彼の発言。

 もう一つ、とてつもなく大きな危機が、ナウルには迫っているのです。(p.126)
 
<了>