《前編》 より

 

 

【デパチカ】
 著者が仕事仲間のアメリカ人のブルースさんと中国人の徐さんを案内したときのこと。
 すべての日程を終えたスタッフたちを成田空港へ見送りに行った時のこと。ブルースと徐さんに日本の感想を聞いてみた。最も印象に残ったのは「デパチカ!」と二人とも声を揃える。
 徐さんいわく、
 「実際に日本を訪れたことで、印象がだいぶ変わりました。私が神経質だと思っていた小奇麗さは、日本の最大の美点なんですね。それを強く感じたのがデパチカ。まるでお花畑にいるみたいだったし、店員の細やかな心遣いも素晴らしかった」
 ブルースはといえば、来日前の期待を超える楽しさに、すっかり親日派の度合いを増した様子だった。(p.85)
 デパ地下巡りで「日本って凄いでしょ」と、いささか優越感に浸っていた僕だが、二人の喜びようと的確な分析には驚いてしまった。日本人でさえ気付いていない素晴らしさが、日本の文化にはあるのかもしれない――。(p.86)
 地方自治体のオッサンたちの発想なら、姉妹都市提携とかでやって来た諸外国の若者たちを案内するのに、お寺とか遺跡とか若者にとってはさしたる興味もないようなところばかり連れ回すのである。しかも、英語すら話せないようなオッサン達が、「私は○○です」とかって自分の肩書きを言い連ねて、地元民に対する肩書きセレモニーのような馬鹿馬鹿しいことに時間を割いているから、訪問者たちと良識的な日本人を心底ウンザリさせるのである。そんなクダランことに時間を使うくらいなら、訪問者たちをデパチカに連れていって、自由に買い物をさせてあげればいいのである。
 地方自治体が行っている国際交流に集っているオヤジどもの活動動機なんて、肩書きという権威保証を望みつつ公費で海外に行けるからという程度の薄汚い寄生虫的心根が元になっているだけだろう。そんな国際交流ならしないほうがいい。時間も費用も無駄になるだけである。

 

 

【アメリカ文化の特徴】
 アメリカ文化の特徴は、「クオリティ(質)よりクオンティティ(量)」。とにかく物量作戦なのである。アメリカに旅行した際、ハンバーガーやホットドック、サンドイッチのサイズに腰を抜かしそうになった方も多いのではないだろうか。(p.90)
 腰を抜かすほどは誇張であるにしても、「食べてみたい」と思う欲求と、「半分以上、残ってしまう」という現実的な問題を秤にかけて、買うのをあきらめた日本人が殆どのはずである。
 アメリカのみならず中国だって馬並みに出てくる場合が少なくない。若者だったらそれに歓喜するだろうけれど、中年以上だったら呆れるか笑っちゃうかである。
 日本料理の特徴はその逆で、「量より質」、あるいは「質と量を兼ね備えた」ものが多い。(p.90)
 「量の文化」の源流は「飢餓」のはず。18世紀に西欧の食糧難から逃れて新大陸を目指した人々は、「腹いっぱい食べること」が最高の幸せだった。地球上に飢餓体験がない国なんて殆どないだろうけれど、「量より質」といいうる食生活が根付いている日本には、やはり自ずからなる文化的高さが備わっているということである。
      《参照》  『帰化日本人』 黄文雄・呉善花・石平 (李白社) 《後編》
               【腹いっぱいの幸せ】

 

 

【馬の小便】
 有名なアメリカン・ブランドの「バドワイザー」は大衆的人気こそあるものの、美食家ぞろいのハリウッドでは「まるで馬の小便だ」とコキおろされる存在。オランダ、ベルギーなどの欧州産ビールは人気があるが、いまや日本のビールはそれらをしのぐほどの人気だ。「キリン」「アサヒ」「サッポロ」といったブランド名は、日常的な言葉にさえなっている。(p.93-94)
 日本で輸入物のバドワイザーを飲んだことがあるけれど、「ギョベッ! 麦水?」って感じだった。「こんなに不味いビールどうして輸入するの?」ってのが正直な思いだった。欧州産のビールだってそんなに美味しくない。日本人は国内で世界一美味しいビールを長年のみ続けているのである。

 

 

【メタボ大国・アメリカの救世主】
 これまでピーナッツかポテトチップスが主流だった皿に、柿の種のようなスナックが盛られていたのだ。これは何? とバーテンダーに聞くと、
 「Soy Snack だよ」
 つまり大豆を原料に作った「おかき」の一種だったのである。
 トーフが人気メニューとなり、ショーユやミソが調味料の定番となったように、いま、大豆がアメリカの食生活を変えている。メタボ大国のアメリカでは、大豆が「救世主」なのだ。そして「ドリンコミュニケーション」は、仕事に悩んでいるカウンセラーのお世話になる者も多いアメリカ人の心も救っている。日本文化は、アメリカ人を心身ともに健康に導いているのだ。(p.106)
 大豆は日本人のパワーの源泉だったのに、近年の日本人は大豆の恩恵を忘れている。日本人が、お米と大豆ベースの日本食から離れたら、日本人の力は急速に衰えてしまう。日本食は、霊の元(ひのもと)の国民を維持する上での根幹の一部であると霊学的に言えるのである。アメリカのみならず世界中で健康に良いという理由で日本食ブームが起きているのに、日本人が日本食離れ傾向にあるとしたら、とんでもないナンセンスである。日本の若者たちは日本食に回帰すべきである。
      《参照》   『誰も知らない開運絶対法則』 白峰・有野真麻 (明窓出版) 《前編》
                【日本酒、味噌汁】
      《参照》   『食がわかれば世界経済がわかる』 榊原英資 (文芸春秋) 《前編》
                【パラダイム・シフト】
 

 

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