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 茂木さんの 『脳を活かす○○術』 シリーズはいくつか出ているらしい。その中では、この本を初めて手にしてみた。御自身の経験談を含めて書かれているから非常に分かりやすいし、誰にとっても参考となる点が多いだろう。横帯に「脳は、生命を輝かすためにある!」 と書かれているけれど、茂木さんの著作には、どれにもそんなモチーフが潜んでいるように思う。
 仕事などしていない “ひきこもり” たちは、脳が干からびてしまわないうちに、是非ともこの本を読んだほうがいいだろう。行動することの大切さがヒシヒシと伝わってくるはずである。2008年5月初版。

 

 

【「脳を活かす仕事術」の神髄】
 「脳を活かす仕事術」の神髄は、喜びの中で「脳の出力と入力のサイクルを回す」ことにほかなりません。好奇心を持って様々な「いいもの」を見て感覚系を鍛え、インプットした情報を運動系から “作品” として外部に出力し、そして成長していくことが大切なんです。(p.10)
 肉体の成長は、口から食物を摂取(入力)し、下から排出(出力)するというサイクルを回すことで行われているのと同じように、脳を活かそうとするならば、感覚系から入力し運動系から出力するというサイクルを回す必要がある。
 脳の「出力」を高めるためには、脳に「入力」された感動した言葉、役立ちそうな情報を、友人などに実際に話して「出力」することが大切です。その結果、その言葉や情報が自分の血となり、肉となって整理されるのです。
 これが、僕の仕事の極意、「脳の入力と出力のサイクルを回す」ということです。(p.30)
   《参照》   『読書力』 齋藤孝 (岩波新書) 《後編》

            【本を読んだらとにかく人に話す】

   《参照》   『ウェブ進化論』 梅田望夫 (ちくま新書) 《後編》

            【ブログの効果】

 優れた業績を残している人というのはどんな分野であれ、非常に多作なんだけれど、感覚系から受け取った情報を、絶えず書いたり描いたり作ったり行動したりして運動系から出力しているから多作になってしまうのである。このサイクルを絶えず回し続けることによってのみ成長が保証されるのである。
 下手くそだから書かない、とか、恥ずかしいから表現しないというのでは、いつまでたっても成長しない。芸術においても巨匠と言われる人々は、タブローを仕上げるまでに膨大な量の(下手くそな)エチュードを描いている。
 脳だって入れるばかりで出さない便秘状態を放置していたら、空回りを初めてしまう。そんな状態を放置しておくと、便秘でお肌が荒れてしまうように、本当に人生がカサカサになって輝かなくなってしまう。

 

 

【感覚系と運動系】
 感覚系学習はちょっとしたきっかけで飛躍的に発達するのに対し、運動系学習は反復でしか鍛えることができません。(p.22)
 外国語の聞き取り能力は1000時間ヒアリングで飛躍的に上達するといわれているけれど、これが入力を専らとする感覚(聴覚)系学習の分かりやすい事例だろう。
 出力を専らとする運動系学習は反復でしか鍛えられないから、スポーツ選手などは、競合する他者より一歩上に出るために膨大な量の練習が必要になる。反復に必要なのは継続である。

 

 

【出力することの大切さ】
 出力の大切さは、上述したとおりなんだけれど、以下のような側面もある。
 言葉に限らず「入力」と「出力」の間には、常に一定のズレが存在します。このズレは非常にもどかしいものですが、「ズレがあるから仕方ない」と出力をあきらめてしまってはいけません。
 なぜなら、実際に出力してみないことには「どこがズレているのか」わからないままになってしまうからです。それでは一向に「ズレ」は修正されません。場合によっては、その乖離がどんどん大きくなってしまうことすらあるでしょう。
 一度、出力することの大切さはまさにここにあります。(p.33)
 言葉を用いて表現している人々にはこの記述がよくわかることだろう。ものづくりの現場で長年働いている人々も大いに頷くんじゃないだろうか。一回の出力(表現・制作)で完璧、なんてまずありえない。仮にそのように見えることが起こったとしても、必ずや積年の蓄積が前提として伏在しているのである。

 

 

【脳の集中回路を鍛える方法】
 人間の集中力を司る回路は、ワーキングメモリと同じ前頭葉にあります。この回路も、他の神経回路と同じように、使えば使うほど鍛えられていくという特性を持っています。ですから「とにかく集中してやってしまう」ことを何度も何度も繰り返せば、集中力を鍛えることができるのです。
 仕事をやると決めたら一秒後には仕事に集中する、ということをくり返し、繰り返しやってみてください。これを続ければ、脳の集中回路は確実に鍛えられています。(p.81)
「やると決めたら一秒後には集中する」 というのがポイントだろう。
 車の基本的な性能ってよく知らないけど、おおよそ急加速・急停止可能な機敏性、そしてコーナリングの確かさなんじゃないだろうか。コーナリングの確かさは、先に書いたズレのことで、急加速・急停止可能な機敏性は、この「やると決めたら一秒後には」という切り替え反応の良さかもしれない。
 脳の瞬発力というかレスポンスのよさって、普通に生きているだけの人はあまり意識しないかもしれないけれど、クリエイティブなビジネス環境にある人にとっては、常に維持されるべき必須の状態と理解できるだろう。

 

 

【創造性は・・・】
 創造性は、側頭葉がつくり出した「経験」と前頭葉が発信する「意欲」の掛け算によって生みだされるのです。(p.111)
 方程式で書けば  「 創造性 = 経験 × 意欲 」 である。
 人は年を重ねれば、誰であれそこそこ経験を積み重ねているものだけれど、その時点で意欲をまったく欠いてしまっているなら、掛け算で表わされる創造性はゼロ!になってしまう。もったいない。もったいなさすぎる。
 天才ほど意欲の重要性を知っている。
   《参照》   『歩を「と金」に変える人材活用術』 羽生善治・二宮清純 (日本経済新聞社)

             【モチベーションと自発性】

 

 

【ひらめきは・・・】
 ひらめきは、経験と意欲だけではどうにもなりません。では、インスピレーションを得るにはどうすればいいのでしょうか。
 それは、日ごろから「準備」をしておくことが大切になります。ここでいう「準備」とは、大きく分けて二つあります。一つは「思考のリフティング」を続けること。もう一つは「世界に問いかける」ということです。
 「思考のリフティング」と「世界に問いかける」という表現から、それらが意図するところは十分推測できるだろう。推測できないなら、この本か 茂木さんの他の著作を読んでみればいい。