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 経営関連の書架でこの本の背表紙を見つけて、置き場所を間違えているんじゃないのと思って手にとって見たら、間違いなく経営学の書籍だった。
 サクラ君という中学一年生が、中学校の校長になって学校を変革してゆくというストーリーで構成されている。
 本書の主旨を一言で言えば、カイゼン(改善)の大切さを語ったものであろう。

 

 

【この本を読んでほしい人】
 あとがきに、こう書かれている。
 この本は、もっともやさしい経営の教科書だ。
 読んでほしいのは、ビジネスマンばかりでなく、学校や市役所や病院やNPOやPTAなど、利益を出すのが目的でない組織の人たちも含まれる。 (p.172)
 利益を出すのが目的ではない組織の人にとって、経営学では常識かつ最重要な用語となっているカイゼン(改善)は、ほとんど眼中にないのである。しかし、より良いものにしようとする意識があるのなら、カイゼンという視点を常に備えるべき。

 

 

【ひとりひとつずつのカイゼン案】
 300人くらいいるのかなあ、ここに。そうすると、みんなが1年に1ヶ所以上カイゼンすることで、この学校が300ヶ所以上よくなります。3年で1000ヶ所くらいはカイゼンされますよね。かけ算、合ってる? 100ヶ所よくなって、いい学校にならないわけがない、でしょう。(p.16-17)
 母集団が大きいと、ひとりひとつずつでも大変な数のカイゼンができる。しかし、カイゼン案というのは、常に考えている人なら、いくらでも出てくるものなのであり、その質も高まるものなのである。
   《参照》   『伝統の逆襲』  奥山清行  祥伝社  《後編》
            【クリエイティブ・クラス】

 カイゼン案(アイデア)創出の源泉は、学んで考え続けることの中にある。

 

 

【貢献するために本当に必要なこと】
 じゃあ、貢献するために本当に必要なことって何だろう。しかも、中学生のときに一番練習しておかなきゃならないことって。
 自分の頭で考えることじゃないか・・・って、ボクは思った。 

 教頭のイッシーに言ったら、
 「そうねぇ。意外と私たち大人って、自分の頭で考えてないからね。 ・・・(中略)・・・ ハハハ!」
 だって。
 じゃあ、教育目標は 「自分の頭で考える中学生を育てる」 でいいのかな。 (p.50)
   《参照》   『強育論』 宮本哲也 (ディスカヴァー)
             【自立】
   《参照》   『なぜ勉強するのか?』 鈴木光司 (ソフトバンク新書)
             【なぜ勉強しなければいけないの?】

 

 

【カイゼンを習慣にする】
 そうしたカイゼンを習慣にすることが集団をもっと強くする。
 あなたは、もう気づかれたのではないでしょうか。(p.149)
 この記述の主旨は、カイゼン案(アイデア)の創出を習慣にするということだけを言っているのではない。ましてや、外的環境をカイゼンして目的を達したから終わるなどという次元のものでもなく、人間の内的習慣をカイゼンするということまで含めて言っている。つまり、意識改革も含んでいる。

 

 

【リズム感】
 人間の体を思い浮かべてみてください。
 健康な体には躍動感あふれるリズムがあるでしょう。
 心臓の脈打つリズム、五感で受けた情報を脳に伝え即座に決断を行動に移すスピード感・・・そして、内臓や筋肉の意識されない動き。
 同じように力強いリズムを持った会社や学校は、活きのよいカイゼンを繰り返します。
 では、このリズムを支えているものは何か?
 ものごとを決定するスピードと、その、テンポのよい実現の繰り返しでしょう。(p.158)
 公務員のように決済に1週間以上を費やすなどというスピード感覚は論外中の論外。(閑な職場ほど、忙しい振りをしたがる心理から、審議中の案件を紙ベースで机上に積み上げたがるのである) 民間企業なら、直ちに倒産している。
 なおかつ、絶え間なく、継続的に、カイゼンを繰り返すのである。
 このリズムを止めてしまうと、頭は活きなくなるし、カイゼン案も質が下がってしまう。
 リズムが止まった時、人も組織も壊死が始まるのである。

 

  《参照》  『日本が教えてくれるホスピタリティーの神髄』 マルコム・トンプソン (祥伝社) 《前編》
               【「カイゼン」 の哲学】

 
<了>