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 写真も文章も、華美ならぬ日本の美しさを、ありのままに写し描き出している。日本人ならばこのような簡素な記述で十分だろう。日本の良さが伝わってくるし分かってくる。
 新発見二つ。
 
 
【かき氷】
枕草子のなかには、かき氷のことがすでに書かれている。
けずった氷に天然の甘味料を添え、
金属のお椀に入れ、食べていたとある。  (p.29)
へ~。 如何なる甘味なりや? 宇治金時みたいなんかなぁ。

 

 

【下駄】
江戸では、男性が角型、女性が丸型。
京都では、男女ともに丸型を使用していたという。
人気の歌舞伎役者が履いた下駄が、
人気になることもあった。    (p.35)
荒事歌舞伎に登場する東男(チャンちゃん)の科白
「男のくせに丸いなんざぁ・・・公家オカマ野郎めッ」
 

【この本の作成動機】
 最後の頁にこのように書かれている。
春になるすこし前
京都と奈良に行く機会がありました。
京都をおとずれるのは十数年ぶり
奈良は修学旅行以来のころです。
それまで、京都と奈良は、わたしのなかでは
自分とは別の世界、そんなふうに思える場所でした。

久しぶりにおとずれた京都で
わたしは、いくつかのことを知りました。
そのきっかけをあたえてくれたのは、一軒の旅館です。
はじめて泊まった旅館で、
わたしは、日本の美しいものとたくさん出会いました。
お香の香りの広がる玄関
おとずれた人をむかえてくれる季節の花
ちいさな茶室にかけてある掛け軸
手入れされた庭の苔
しずかな空間にひびく水の音
風にゆれる竹、青い畳の色

障子越しにはいってくるひかり
廊下に映る影、そして、気持ちよく働く人たち。
それが、その場所で出会ったものです。
そこには、日常を超えた
美しい日本の世界が広がっていました。
その空間を守っている人たちがいました。
そして、そのとき気づいたのです。
いままで、そういったものを見すごしていたこと
きちんと見てこなかったこと、に。

素晴しいものがそばにある。
そのとき、改めて、日本の良さを認識しました。
この国のいいものをもっと知りたいと思いました。

それから日本のものに興味を持ちはじめ
どこかへ出かけて、見て、話を聞き、教わる。
そんなことをはじめました。

以前から知っていたものは、もう少し深く知ろう。
そう思いはじめました。
そして、それは、いまもつづいています。

わたしのなかにある日本の美しいものやたのしい行事
大切な思いを書いてみました。
写真は、一年の時間をかけ、撮ってもらいました。
本を読んで日本のものに興味を持ったり、
同じ気持ちを感じてくださったらうれしく思います。

わたしたちのなかには
自分でも知らないうちに日本の美しいものを
認識できる力があります。
それに気づけば、
あたらしい世界がもうひとつ
広がっていくような気がします。  (p.77-79)
 著者の年齢は書いてないけれど、おそらく40代以降なのだろう。そうでないならば、このように素直に、日本の良さに引き込まれはしないだろう。チャンちゃんも若くは無いから、この著作になじみやすい。


【何故、この本を手にしたか?】
 そもそも、この著作を読む気になったのには理由がある。
 一昨夜、深夜放送のテレビを見ていて、シャネルのフランス人社長 (リシャール・コラス) さんの、日本文化を守ろうとする態度に心を打たれたからだ。
 17歳で日本を旅して、それから日本語を本格的に学び、今では流暢な日本語の話し手である。17歳の時の体験を基にした処女作( 『遥かなる航跡』 )の出版記念パーティーの様子が映っていた。そして日本人の若い社員たちが知らない日本の文化的な行事を、社内イベントに取り入れている様子が映ってもいた。鎌倉の自宅は純日本家屋だ。
 銀座通りの活性化に関する日本人の 「フランス風やイタリア風のカフェを作ったらどうか・・」 という意見に対して、嘲罵の語気強く、「ここは日本じゃないか・・・何でフランスやイタリアなんだ・・・、日本には日本の良さがあるだろう・・・」。 そんな風に言っていた。
 結構な年配者の日本人ですら、日本の良さを知らない。美しさを知らない。語れない。チャンちゃんも含め、おおいに恥ずかしいことである。日本人はフランス人からも学ぶことが多々ありそうだ。

 

 
 
<了>