今回のテーマはスポーツ界(特にマイナースポーツの世界)の関係者にはよく考えてもらいたいことであるので、そこを考慮した上で聞いてもらいたい。

その競技にもよるが、スポーツの世界で働いている関係者というのは、その競技(種目)というのに魅力や価値を見出しているので、その競技の世界で働いているのが大半である。

もっと言えばスポーツに限らず、娯楽産業全般に絡んでくることでもあるが、その娯楽が楽しい上に、他の人にもその娯楽の楽しさを知ってもらいたい。

それ故に、たとえ給料が安くても、そうした世界で働くことを厭わない人が多数いるのは重々承知の上である。

しかし悲しいかな、世の中には娯楽というのは溢れていて、自分(達)の中では「良い」と思ったネタやコンテンツというモノに限って、世間には響かないという事例は多数ある。

ぶっちゃけて申し訳ないが、筆者の知人で韓国語の教材の女性編集者が、K-POPが好きで韓国音楽の歴史特集の様な教材を作って、思い入れ100%で世に出したものの、あまり上手くいかなかったという話を聞いた。

筆者自身、韓国語を勉強していたのもK-POPではなく、韓国スポーツ界に興味があったからであるので、正直興味がなかったのを覚えている。

逆にその教材で韓国のスポーツに興味があるのは筆者くらいだ。

こうして見ても同じ国から発信されているコンテンツでも反応するアンテナの感度の違いは人によって様々なことが分かる。作り手が「良い」と思っても、受けての反応は色々ある。

そうした中で筆者は何が言いたいのかと言えば、スポーツという世界において、現場の人間が思う様な「良い試合が客を引き寄せる」という時代はとうの昔に終わってしまったということだ。〈②に続く〉
①ではプロボクシングの中堅クラスの試合で、腕っ節自慢の豪腕拳士も腕力だけでは、非力な拳士の軽打という軍門に下る、という話をしたが、②ではこれについてもっと詳しい説明をしたい。

ボクシング漫画の金字塔である「あしたのジョー」で主人公の矢吹丈にトレーナーの丹下段平がパンチを教えるシーンがある。

丹下段平は繰り返し「脇をえぐるように打つべし、打つべし」と口酸っぱくジョーに伝えた。

この「脇をえぐる」というのは、言い換えれば「脇を絞れ」ということに他ならない。

すなわちあしたのジョーの丹下段平の教えというのも、ボクシングという競技の本質を深く貫いているのである。

①で述べた豪腕拳士のパンチも脇が絞れていなくて、むしろ甘くなっていた。

右も左もわからない4回戦の拳士ならいざ知らず、中堅クラスになったらどんな豪腕でも、脇絞りが甘いパンチなどテレフォンパンチ(電話で攻撃箇所を教えてくれるようなバレバレのパンチ)で、怖くない。

逆に非力な軽打でも脇を絞れていればパンチの出どころが分からないので、ダメージが蓄積する。

つまるところボクシングというのは腕力自慢のケンカとは全く異質な争いなのである。

その上でアゴが浮くとボクシングならパンチをまともにもらって効いてしまうし、野球のバッターでもバランスを崩して本来のスウィングができない。

肩が開くのも同様で、肩の早すぎる開きというのは、ボクシングだとこれまたテレフォンパンチになるし、野球の打者も身体の体軸をうまくバットに伝えられず凡打かファールが関の山である。

逆に脇の絞りを矯正すると好成績になる。思い出すのが2016年の大相撲初場所の当時の大関・琴奨菊が今までだと脇絞りが甘くなった。

そのため栃煌山のような脇を二本差すような力士にアッサリ脇を差されて、得意のガブリに行けずに土俵を割る相撲が多かった。

しかしこの場所だけは脇をしっかり絞った当たりで14勝1敗で優勝。

アゴを上げずに低く当たって脇を締めるというのは、言うは易し行うは難しで、本当に地味にキツいことだが、この場所だけは琴奨菊はこれを徹底して初の快挙となった。

今回のテーマである「アゴを引け。脇を絞れ。肩を開くな」というのは徹底するのは本当に難しい。しかし、1番大切なことは1番キツいというが、実のところ地道というのが1番の近道なのだ。

こうした地味にキツくて単調な作業の繰り返しが、アスリートとしての栄光への唯一の道なのである。
このブログの読者のほとんどは何かしらのスポーツが好きで、なおかつそうした競技の経験者だったりするので、今回のタイトルにドキッとした人は多いかもしれない。

そうした中で今回はスポーツに必要な動作の基本について述べていきたい。

まぁ、述べるも何も今回のタイトル自体がいきなり結論なわけだが「以上っ!」ではブログとして成立しないので、もちろん補足説明をしていきたい。

このブログのヘビーな読者なら分かると思うが、筆者はボクサーを志し、また挫折した人間でもある。

今はたまに後楽園ホールでプロボクシング興行を楽しむだけで良くなったが、前座の中堅クラスの試合で、キャリアが7勝6KO5敗1分みたいな拳士がいたとする。

勝ち星のほとんどがノックアウトで決着をつけた豪腕拳士。しかし、対戦相手も勝算があってこの試合を組んだはずだ。

試合をすると前座の4回戦(三軍クラス)の殴り合いで勝ち残った豪腕拳士も、中堅になるとそれでは勝てなくなる。

逆に勝ちがほとんど判定決着の非力な拳士の方が、要所要所でタイミングよくポコポコと軽打をヒットさせる。

最終的にダウンさせるほどではないが、非力な拳士がパンチをしつこい連打でまとめ打ちして、レフェリーが救出する形でTKO勝ちになった。

ではなぜ、丸太みたいな腕の豪腕拳士の攻撃が機能しなかったのか?

それが今回のタイトルにある「脇を絞れ」である。

ボクシングに限らず、ほとんどの競技の基本として共通する注意点が、この「アゴを引け。脇を絞れ。肩を開くな」なのだ。〈②に続く〉