皆さま
「生きてて良かった」
この言葉は僕が
ずっと苦しいと感じていた時代
思いつくことがありませんでしたが、
本当は、本当の自分は
この言葉を叫びたかったに
違いありません。
本日もよろしくお願いします。
初めましての方は、こちらから自己紹介を兼ねた
僕の物語をお読みいただくことができます。
では、書いていきます。
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前回までの物語はこちらからお読みください。
「生きてて良かったと実感した祥平の物語③」
真っ暗闇の中、祥平は
足音がしないように
静かに立ち上がり、
少し乱れた浴衣の
帯を締め直しました。
一度だけ妻の美由紀の
寝顔を祥平は見ました。
祥平は慎重に雪駄を
履いて部屋を出たのです。
こんな夜遅くに祥平は
どこへ行くのでしょうか。
もしかしたら大露天風呂かも
しれませんが、
足早に通過していきます。
そうして、しばらくカツカツと
音を立てながらたどり着いた
場所はマスクを被っていた女性の
客室でした。
祥平が戸をノックをすると
マスクを被った女性が
出迎えました。
少しドキリとした祥平でしたが、
平静を取り戻し、
マスクを被っていた女性と対面したのです。
どうやら2人は知り合いのようでした。
しかも、親密な関係のように見えます。
「待っていたわ」
「僕もずっと会いたかった」
「マスク、ずっと被ってたの?」
祥平にそう言われた
マスクを被る女性は
ゆっくりとマスクを
取り外しました。
なんと、そこに現れたのは
妻の美由紀の母にあたる
義母の玲子でした。
次に祥平が義母の玲子の
部屋から出てきたのは
夜も明けそうな
深夜遅くになってからでした。
足早に妻の美由紀が寝ているはずの
自分の客室に帰って行く祥平には
一つだけ気になることがありました。
義母の玲子の部屋にいる時に
コンコンとノックの音がした気が
するのです。
しかし、それどころではなかった
祥平と義母の玲子は
特に対応しませんでした。
「もしかして・・・」と祥平の
心臓が少しドキリと
していましたが、
振り払って歩き続けます。
そして、祥平は自分の客室に
戻ってきたのです。
ゆっくりと鍵を開けて、
部屋の中に入ります。
暗くて良くわかりませんが、
片方の布団には人の形が
あるようでした。
そして、耳を澄ませてみると
静かな寝息が聞こえます。
ただ、それは出かけていく時に
感じた深いものよりは
とても浅いように聞こえました。
そのことは祥平の肝を
縮こまらせようとしましたが、
ここで立ち続けていて
妻の美由紀に気づかれたく
ありません。
素早く部屋の中に入って
布団に滑り込みます。
まだ暗さに慣れない目を
閉じながら祥平は
今日一日にあったことを
振り返ります。
「一日で親子制覇」
そんなくだらなく聞こえる
言葉がその時の祥平を
満足させているようでした。
そして、心配になった祥平は
横目で寝ているはずの
妻の美由紀の姿を
確認しました。
祥平の目が慣れていないからかも
しれませんが、
美由紀の目が開いているように
感じました。
祥平は怖くなり、
すぐに目を閉じました。
そうして、間もなく
朝がやってくるのです。
祥平が寝不足の身体を
起こして、目を覚ますと
妻の美由紀はすでに
起きていているようでした。
「まさか、気が付かれていないだろうか」
そんな風に祥平は心配をしながら
妻の美由紀に声をかけました。
「お、おはよう」
祥平は少し口ごもりました。
しかし、妻の美由紀は
そんなことは気にも留めていないように
「おはよう。最高の温泉旅行をありがとう」と
少し濡れた髪を気にしながら、
笑顔で祥平にそう言いました。
それを見た祥平は
ほっと胸をなでおろしたい
気持ちになりました。
祥平は妻と義母と
温泉旅行に行くという
あまりにも危険な
計画をやり切ったのです。
【~続く~】
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この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
世の中が今よりも幸せな場所になっていきますよう
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。
*この物語はフィクションです。