皆さま
まさかの祖父編も長くなりました。
本日も僕の物語に
お付き合いください。
よろしくお願いします。
初めましての方は、こちらから自己紹介を兼ねた
僕の物語をお読みいただくことができます。
では、書いていきます。
-----------------------------------------------------------------------------
「過去の体験を闇から光に変えた僕の物語~祖父編②~」
前回のお話しはこちらからお読みください。
闇から光に変えたシリーズはこちらからお読みください。
僕が中学、高校生くらいになると、
祖父との関係も小さい頃のものとは
変わってきたように思います。
反抗期だったのかもしれません。
しかし、高校生の時に
何気なく祖父から言われた
「お前はストーリーテラーの才がある」
という言葉は僕が大人になってから
とても意味を成す大切な言葉です。
その言葉によって物語を書くことが
僕の人生では大切なものだと
気が付くことができたのです。
そんな祖父も僕が社会人になって
4~5年が経つ頃
大きな病気になりました。
話しを聞いてみると
もう治癒の見込みはないとの
ことでした。
僕は定期的にお見舞いに
行っていましたが、
その度に祖父の体力は
落ちていっているようでした。
次第に祖父は歩けなくなり
身体を起こすことが困難になり
話すことができなくなり
筆談でコミュニケーションを
とるようになりました。
僕がお見舞いに行ったある日、
祖父はホワイトボードにこう書きました。
「仕事は順調か?」
僕は色々な意味で言葉がつまりました。
この状況で、僕の仕事の状況を
案じてくれているのです。
自分が病気で大変な状況なのに、
そんな想いもありました。
しかし、実はその頃僕は
会社を辞めていたのです。
それで、僕は祖父が話せないことを
言いことに、なにも答えませんでした。
こんな場面で「仕事を辞めたんだ」と
言う勇気がなかったのです。
祖父をがっかりさせることが
怖かったのです。
しばらく僕が黙っていると
祖父はホワイトボードを消して
新たにこう書きました。
「返事がないぞ」
祖父はちゃんと答えを
聞きたかったのです。
僕は悩みましたが、
「順調だよ」と嘘をつきました。
すると、一瞬表情が緩んだ祖父は
ホワイトボードを消して、こう書きました。
「よかった。安心した」
僕は祖父の顔を直視できないで
いました。
嘘をついてしまったという
罪悪感が残りました。
と、同時にこの状況で
僕の身を案じてくれる
器の大きさに尊敬の念さえ
湧いてきました。
そんな罪悪感を抱えたまま
祖父はとうとう筆談もできなくなりました。
ベッドの上で仰向けになっています。
もう、何かを話しても答えはありません。
そして、僕はお見舞いの帰り際
祖父の手を握りました。
「また来るよ」と独りごとのように
僕は呟きました。
その手はもちろん暖かくて、
すると、祖父はそっと柔らかい力で
握り返してくれました。
その感触を忘れることはできません。
それが、生きている祖父との最後の
やり取りになりました。
次に病院に行った時には
祖父はもう亡くなっていました。
最後に手を握ってみましたが、
あの時の暖かさはなかったのです。
僕は嘘をついたまま、祖父と
お別れすることになってしまいました。
それは心のどこかでずっと
引っ掛かっていました。
でも、きちんと向き合うことで
祖父はそんなことは
今更気にしているはずがないと
わかりました。
祖父に嘘をついた僕を
僕が許すことにしたのです。
【終わり】
-------------------------------------------------------------------
この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
世の中が今よりも幸せな場所になっていきますよう
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。