英語力、とりわけビジネス上の英語力と翻訳能力とは全く別物です。
英語があまり得意でない人は、両者を同一視して、「英語が出来るんだから翻訳もできるでしょ」という感覚を持っているのですが、これは大変な誤解です。![]()
「翻訳」が「ビジネス上の英語力」と大きく異なる点は以下の2点です。
① ビジネス上の英語では、(契約書などの厳密な文書を除けば)「あらかた」理解できていれば十分です。しかし、翻訳は英文を100%理解している必要があります。
② さらに翻訳では、100%理解した内容を「日本語として」分かり易く表現する(一種の、和文和訳能力)ことが必要となります。
①と②の点で、「翻訳」は「(ビジネス上の)英文理解(読解)」に比べると膨大な手間暇がかかります。
以前、社内のあるプロジェクトで、どうしても英語の文献を読む必要が生じたことがありました。文献の量はA4で300ページ位ありました。
その時、プロジェクトリーダーだった上司は、「とりあえず、英語ができる○○さん、△△君に翻訳してもらって、それから議論を開始しよう」と提案しました。
私は、この無意味な案に大反対で、思わず切れかかりました。この上司は、「翻訳」の大変さ(翻訳に要するコスト)を軽く見過ぎており、かつ、「ビジネスに必要な英語」と翻訳の区別がつかない人だったのです。![]()
私は極力冷静さを装いながらも、次のよう発言をしました。
① 全文翻訳は、翻訳する担当者の負荷が大きく、かつ、時間がかかり過ぎる。
(本心では、お前はアホか!と言いたいくらいでしたが・・・)
② メンバー全員で分担して、担当部分の要約を提出してもらう。
③ ②をベースに出来るだけ早く議論をスタートする。
幸い、メンバーの多くが賛同してくれたので、リーダーだった上司もこの案を受け入れてくれました。
繰り返しになりますが、翻訳の場合は日本語として完全な形にしないといけません。そうすると、「この訳語はおかしい」、とか、「日本語として意味が通じない」みたいな枝葉の些末な議論になってしまい、肝心要の中身の議論が疎かになります。最悪、プロジェクトの成果物が「翻訳物」になりかねません。そうなると、まったく無意味なプロジェクトとなります。
ビジネス上の英語力とは、英語で書かれた情報を素早く咀嚼して、それを自分たちのビジネスに活かすことです。英語の情報をすべて翻訳して(日本語にして)、そこからスタートするのでは、スピード重視のビジネスの世界ではとうてい間に合いません。