勝間和代さんが、2月末に英語に関する本を出版しました。
タイトルは「最後の英語やり直し!」 ![]()
このタイトルには興味をそそられましたね。思わず買いそうになりましたから。![]()
- 最後の英語やり直し!/毎日新聞社
- ¥945
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書店で少し立ち読みした程度なので内容の細部は分かりませんが、「普通の英語勉強法の本」という印象でした。以下の5点については、概ね同意見でした。
① 英語の習得には時間がかかる。
② 英語にできるだけ多く触れる。
③ 英語ができると情報収集の幅が広がる。
④ 日本にいる限り日本語で済んでしまうため、英語を学ぶインセンティブが弱い。
⑤ 語彙が重要である。
しかし、本の大半が総論で、各論(具体的方法論)になると「もう少し具体的に書いてほしいな」、とか、「そのやり方ってどうなのよ?」みたいな部分もありました。ただ、方法論は各人各様なので、これはこれで別に構いません。![]()
勝間さんの本のエッセンスは、実際に本を読まなくても特設ページ を見れば大体わかるようです。勝間さんのインタビューも掲載されています。こちらを読む限りにおいても、普通の勉強法と思いました。
むしろ私が違和感を覚えたのは、出版社のニュースサイト にある勝間さんのインタビュー動画の方です。
冒頭、勝間さんから英語で次のような紹介があります。
Hello everyone. My name is Kazuyo Kastuma, as you may know.
This is a my newest book how to learn English finally is that people who learn English a lot, however, still they cannot speak English or they cannot hear English is my target.
私は英語の専門家ではありませんが、一応それなりに(仕事で)英語を使っています。
そこで、私なりに上記の文章にコメントを付したいと思います。
まず呼びかけに続く自己紹介の文章ですが、勝間さんほどの有名人ですから、as you may knowは不要と思います。また、as you may knowというと、単に「名前や顔を知っている」というよりも、「今、私はこんなことやっています。」、とか、「こんな情報があるんです。」というように、自分が話したいことや相手が知りたがっていそうなことを話す場合に使うケースが多いような気がします(何となくですが・・・)。とはいえ、ここまでは基本的にOKです。
問題はその次、This is a my newest book....is my target.の文章(?)です。この文章は正直言ってかなりマズイです。![]()
まず、howの前に前置詞のaboutが抜けているとか、冠詞のaが不要といった細かいところは別にして、文章全体がグダグダで意味が分かりにくくなっています。
最初のミスは、how to learn English finallyの部分です。この表現で、著書のタイトルである「最後の英語やり直し≒英語の最終的な勉強法」と言いたいのだとしたら、残念ながら伝わらないと思います。
This is my newest book how to learn English finally.という文章だと、(敢えて日本語に訳すと)「この最新刊は、私がついに英語の勉強方法を学んだ(ことに関する)本です。」という意味になってしまいます。「最終的な勉強法」と言いたい場合は、形容詞のfinalを用いて、 final methodsのような表現を使うべきでしょう。
例えば、This is my newest book about final methods of learning English. という感じでしょうか。
次に、is thatを使って文章をつなげていますけど、(この場合)これもマズイです。is thatは、一般には「The most serious problem(=主部) is that S+V」のように使います。」文章同士をつなぐis thatというのは、あったとしても、恐らく例外的用法と思います。
確かに、文章同士ををつなぐ場合に「文章A, which is that, 文章B」という表現はあります。そこで、which is thatのwhichが落ちた表現と言えなくもないのですが、そうした意図で話された文章とも思えなかったので、こちらの可能性は排除しました。
またis thatに続く部分もpeople who learn English a lot, however, still they cannot speak English or they cannot hear English is my targetとなっていますが、結論のis my targetが最後に出てくるので、文意が通りにくくなっています。
そこで、上記の勝間さんの文章を少しだけ修正してみました。
This is my newest book about final methods of learning English. My target is the people who learn English a lot, however, still they cannot speak English or they cannot hear English.
修正点は、①finallyの部分、②My targetを文頭に出したという2点だけです。文法的にはまだ間違いが残るものの、上記の文章であれば意味は十分通じると思います。
もう少し修正すると次のようになります。
This is my newest book about final methods of learning English. My target is the people who learn English a lot, but, cannot speak English or cannot hear English.
大分すっきりして分かり易くなったと思います(自画自賛ですが。) ![]()
ここでは、文法的に間違っているhoweverの用法を修正し、接続詞butを使いました。howeverは(接続副詞で)接続詞ではないため、「S+V, however, S+V」のように、however単独で文章と文章をつなぐことはできません。howeverを使って文章同士をつなげたい場合には、接続詞を補って「S+V, and however, S+V」などという形にする必要があります。
このhoweverの用法などは、一見、細かい文法事項に見えるため「細かい点にこだわり過ぎる」
と思われるかもしれません。しかし、英語の本場である欧米の大学や大学院(MBA等)を受ける際に必要なTOEFLのEssayではこうした誤りは間違いなく減点されます。さらに、欧米人を含めMBA志願者が等しく受けるGMATという試験では、sentence correctionという分野があって、文法的な間違いだけでなく、不適切な表現や冗長な表現に関する間違い探しを、それこそ鬼
のようにやらされます。
すなわち、欧米人でも(少なくとも高等教育を受けるレベルの人達は)文法や語法を非常に重視しているということです。さすがに、GMATはやや行き過ぎた面は感じましたが、いずれにしても文法や語法は大事です。
勝間さんは、動画の中で文法をあまり重視していないようで、「aとtheの使い方にもルールはない」みたいなことをおっしゃっていますが、明かな事実誤認でしょう。「aとthe、あるいは無冠詞に関する一定のルール」は存在します。英語は言葉ですから100%説明できるルールはありませんが、その時の気分で適当に使っているわけではありません。しかも、文法上の様々なルールは(細々としたものを除けば)英語の学習に非常に役立つのです。
さて、先の文章に戻ると、その他にも気になる表現が2つあります。まず、cannot hear Englishです。英語の音自体は聞こえていると思うので、cannot understand (spoken) Englishと言った方が良いような気がします。
あとmy targetという表現も、直接的過ぎる気がします。何だか勝間さんに狙われているような感じがして怖いです。 ![]()
批判ばかりしていると、「じゃあ、実際どう話すのかやってみろ!」と言われそうですね。私だったら次のように話します。
My newest book shows the final methods of learning English. You've been studying English ardently for many years. Despite all your efforts, you may feel difficulty in speaking or understanding English. And if so, you may be on the wrong track. But don't worry! This is the book for you!
私の英語力も大して誇れるものではなく、英語の専門家の方から見たら改善すべき点が多い文章かもしれません。しかし、文法的間違いはないと思いますし、まあまあ通じる英語になっていると思います。話し言葉なので、極力文章を短くして、一般的なpeopleやpersonでなく、目の前の視聴者に呼びかけるという意味でyouを使っています。また、最後の文章は少し悩んだのですが、I've written this book for you. という表現も考えられます。なお、同じ内容を「書き言葉で書く」場合には、文章の長さや表現は多少違ってくると思います。
ところで、勝間さん本来の英語力から考えると、動画の冒頭の英語表現はいかにも違和感があります。
全部で20秒にも満たない短い文章なのですから、自分で原稿を書いてみて、事前に読んでおくという準備さえすれば、こんなグダグダ表現にはならなかったはずです。
私が違和感を覚えたのは、英語表現そのものというよりも、準備不足の方です。
せっかく自分の書いた本について視聴者に語るのであれば、きちんと準備してから臨んで欲しいと思いました。
最後に、勝間さんはインタビュー記事の中で「いまだに発音はカタカナ英語ですが、仕事でもプライベートでも英語で不都合を感じることはありません。」とおっしゃっていますが、本当でしょうか?
私は、①自己の英語力の評価、②文法と発音の重要性、という点については若干異論があります。
まず①ですが、私はプライベートで英語を使う機会は少ないですが、仕事で使う際、今でもかなりの苦労や不都合を感じています。何といっても英語は母国語ではないわけですから。したがって、「英語に不自由しない」状況なんていうのは、ちょっと信じられません。
②については、文法の必要性は既にコメントしましたので、発音についてコメントします。
カタカナ発音が悪いわけではありませんが、英語が上達してくると、自然と「聴き取り易い英語とはどういうものか?」という点に意識が向いてくると思います。カタカナ発音で許容されるのは、使える英語を勉強中の人達です。本格的に英語を使うのであれば、カタカナ発音は直すべきです。「今はカタカナ発音でもよいけど、将来的には・・・」と言って欲しいところですね。
聴き取りにくい英語というのは、知らず知らずのうちに聴き手にかなりのストレス(不快感)を与えるものですから、相手がどのような英語を話そうと、自分は「分かり易いクリアな英語」を話す(使う)よう、心がけたいものです。![]()
勝間さんの英語の勉強法を否定するつもりはありませんが、仮にこの本のとおり勉強した(できた)として、果たして「本当に使える英語」が身に付くかどうかについては、個人的にはやや疑問です。
もっとも、最初から到達できないようなゴールを設定したり、「どこまで行ってもマダマダ足りない」みたいな修行僧
のような話をしてしまうと、ついて来られる人がいなくなってしまうのかもしれません。
もしかして、それを見越した(計算の上での)勝間さん流の演出なのかもしれません。
もしかしてだけど....
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