映画「身代わり忠臣蔵」…これは愚作だ. | チャコティの副長日誌

チャコティの副長日誌

主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



製作年:2023年 製作国;日本 上映時間:119分



作冬の公開時は当然スルーした.ムロツヨシのふ抜けた演技が嫌いだからね.
レンタルDVD化され、どうかとも思ったが、他にも借りるものが無く、
しょうがなく借りてきてみた.本年度累積141本目はコミカル時代劇.
————————————————————

時代劇「忠臣蔵」をベースに「身代わり」という設定を加えてコミカルに描いた
土橋章宏の同名小説を、ムロツヨシ主演で映画化.

嫌われ者の旗本・吉良上野介からの陰湿ないじめに耐えかねた赤穂藩主が、
江戸城内で吉良に斬りかかった.赤穂藩主は当然切腹となったが、実は
斬られた吉良も逃げ傷で瀕死の状態に陥っていた.

逃げて死んだとなれば武士の恥、お家取り潰しも免れない.そこで吉良家
家臣の提案により、上野介にそっくりな弟・孝証を身代わりにして幕府を
騙し抜こうという前代未聞の作戦が実行されることに.

一方、切腹した赤穂藩主の部下・大石内蔵助は、仇討ちの機会をうかがって
いるように見えたが…….

正反対の性格を持つ吉良上野介と孝証の兄弟をムロが1人2役で演じ分け、
永山瑛太が大石内蔵助役で共演.川口春奈、林遣都、北村一輝、柄本明が
脇を固める.原作者・土橋章宏が自ら脚本を手がけ、「総理の夫」「かぐや様は
告らせたい 天才たちの恋愛頭脳戦」の河合勇人監督がメガホンをとった.

以上は《映画.COM》から転載.
—————————————————————


誰もが知る“忠臣蔵”ネタに「吉良と赤穂の大芝居」でそこに新風を送り込もう
と言う狙いは判るのだけど、大石内蔵助:瑛太と吉良上野介の弟・孝証:ムロ・
ツヨシがノープランで討ち入りに臨むのがやはりおかしい.
 

 

偶然見つけた吉良上野介の遺体から首を切り離し、“討って取った”と名乗り
をあげたのまでは良かったが、それを白布で包み吉良側と大石側で奪い合い
するシーンがいけない.

笑いを取るつもりだったのだろう.両チームがまるでラグビーの試合をするように
遺体の頭を、パスしたり、蹴ってショートパントしたり、時にはモールを組んだり、
ラインアウトを組んだりと、縦横無尽に頭を転がしまくるのだ.これはいけない.
いくら憎まれた上野介の頭であっても、遺体をボール代わりにしていけないと
思うわけである.不謹慎の極みと思う.

作り手が“遊び”のつもりで入れたであろうネタなのだろうが、心から笑えないもの
であった.他にもムロツヨシの鼻の近くのほくろを吉良上野介の“顔の特徴”として、
身代わりを務める弟・孝証がつけぼくろを貼りつけるのだが、柳沢吉保に面会する際、
畳の上に付けほくろを落としてしまい四苦八苦する様など全く面白く無い.

物語の設定としては、幕府の浅野家と吉良家の処遇の判断ミスに端を発し、
その後も頑迷に態度を変えない幕府の旧慣を痛烈に皮肉り、大衆・市民を
味方にして臨む討ち入りにおいて、大石と吉良の密約というのは面白い設定
なのに、全く生かし切れていないのが残念.
 

 

結局、大石蔵之助ら討ち入りメンバーは全員切腹.
まあ身代わりの弟・孝証は生き延びるだけというつまらないエンディング.

「忠臣蔵」がこうも300年以上に渡り日本人の心を掴む理由は、
それは、正しいことのために、自己犠牲を厭わない気持ちの行動結果だから.
そこをはき違えた本作は愚作としか言いようが無い.