映画「違国日記」…後味が極めて好い良作品. | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



製作年:2024年 製作国:日本 上映時間:139分



新垣結衣、夏帆、瀬戸耕史と好きな役者ぞろいなので公開初日に観てみた.
本年度累積129本目は面白い新垣が観られるヒューマンドラマ.
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コミック誌「FEEL YOUNG」で2017年から2023年まで連載されたヤマシタ
トモコの同名漫画を映画化し、人見知りな女性小説家と人懐っこい姪の
奇妙な共同生活を描いたヒューマンドラマ.

大嫌いだった姉を亡くした35歳の小説家・高代槙生は、姉の娘である15歳
の田汲朝に無神経な言葉を吐く親族たちの態度に我慢ならず、朝を引き
取ることに.

他人と一緒に暮らすことに戸惑う不器用な槙生を、親友の醍醐奈々や元恋人
の笠町信吾が支えていく.対照的な性格の槙生と朝は、なかなか理解し
合えない寂しさを抱えながらも、丁寧に日々を重ね生活を育むうちに、
家族とも異なるかけがえのない関係を築いていく.

新垣結衣が槙生役、オーディションで抜てきされた新人・早瀬憩が朝役で
ダブル主演を務め、槙生の友人・醍醐を夏帆、元恋人・笠町を瀬戸康史、
朝の親友・楢󠄀えみりを小宮山莉渚がそれぞれ演じる.
監督・脚本は「PARKS パークス」「ジオラマボーイ・パノラマガール」の
瀬田なつき.

以上は《映画.COM》から転載.
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親を亡くした娘を、たらい回しから救う為に引き取って暮らす物語と
いうと、あの是枝監督の名作「海街ダイアリー」を思い浮かばせる.
シリアスなテーマではあるが、その重さ、苦しさではなく、その先に
ある希望のようなものを描いてくれている作品.

そんな意味では、観た後の印象、気持ちが極めて「海街ダイアリー」に
そっくりなことに気付く.もしや本作の瀬田なつき監督は是枝一派?かと
も思ったが、経歴を見てもそんな生まれではないようだ.
 

 

マンションで一人暮らす小説家の槙生:新垣結衣が両親を失くした
朝:早瀬憩 を引き取ることになり、ぎくしゃくした同居が始まる.
そんな2人の関係が、槙生の友人・醍醐:夏帆や朝の親友えみり:
小宮山莉渚といった触媒のような存在とのかかわりにより次第に
変化していく流れが好ましい.
 

 

「違国」という造語で強調されているように、人はみな違う存在で、
考え方も感じ方も違うのだから、安易に気持ちが分かるとか
共感できるといった馴れ合いはしないが、違いを認めたうえで
寄り添ったり支え合ったりすることはできるのだ.
そうしたメッセージは昨今の多様性尊重の流れにも沿っている.

「海街ダイアリー」の行く先の無い少女役デビュー、輝きを放った
広瀬すずのように、本作の朝役の早瀬憩も素晴らしい演技を見せる.
撮影当時15歳、今年6月で17歳になったばかりだそう.

無垢な幼さを残しているようで、老成してみえる瞬間もあって、
不思議な魅力がある.演技もしかりしている.これから俳優としての
成長と活躍に大いに期待したい.

新垣結衣の安定した、突き放すような演技はいつも通りだ.
死ぬほど嫌っていた姉の子供を引き取ってしまう境遇には、
滑稽さと、悲劇性がかいま見える演技だった.

極端に仲の悪い姉妹の事例が身近にあり、その怨み、つらみの
経緯は本作では描かれないが、私には容易に想像がついてしまう.
世の中、仲が良い姉妹、兄弟だけでは無いのだ.

本作は家族の話でもあるが、青春の話でもある.
2時間強の映画の中で、色んな要素を高密度に描いている.
朝が中学から高校に進学し、送る高校生生活の一端が覗けるのも
楽しい.軽音楽部のセッションを iPhoneでライブ中継で新垣結衣が
仕事部屋で楽しむシーンは印象的だ.

少し長尺、でも高密度だからといって暑苦しいものでは決してなく、
むしろカラッと力が抜けている.素晴らしい映画に仕上がっている.