映画「ミッシング」…石原さとみ大熱演そして狂演. | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



製作年:2024年 製作国:日本 上映時間:119分



興味有る監督吉田恵輔の新作を観賞.劇場で予告をさんざ見せられたしね.
本年度累積111本目は、重い人間ドラマ.
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「空白」「ヒメアノ~ル」の吉田恵輔監督が、石原さとみを主演に迎えて
オリジナル脚本で撮りあげたヒューマンドラマ.幼女失踪事件を軸に、
失ってしまった大切なものを取り戻していく人々の姿をリアルかつ繊細
に描き出す.

沙織里の娘・美羽が突然いなくなった.懸命な捜索も虚しく3カ月が過ぎ、
沙織里は世間の関心が薄れていくことに焦りを感じていた.夫の豊とは
事件に対する温度差からケンカが絶えず、唯一取材を続けてくれる
地元テレビ局の記者・砂田を頼る日々.

そんな中、沙織里が娘の失踪時にアイドルのライブに行っていたことが
知られ、ネット上で育児放棄だと誹謗中傷の標的になってしまう.
世間の好奇の目にさらされ続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、
いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じるように.

一方、砂田は視聴率獲得を狙う局上層部の意向により、沙織里や彼女の
弟・圭吾に対する世間の関心を煽るような取材を命じられてしまう.

愛する娘の失踪により徐々に心を失くしていく沙織里を石原が体当たり
で熱演し、記者・砂田を中村倫也、沙織里の夫・豊を青木崇高、沙織里の
弟・圭吾を森優作が演じる.

以上は《映画.COM》から転載.
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第一印象は、ヒロイン石原さとみの大熱演.彼女の代表作となり得る演技、
狂演にも感じられた. 失った娘に対する愛情…自分以外に娘を思っている
人間はいない、という強い想いの行動、感情表現が過激にも思えるよう.

自分が追っかけているバンドのライブに出かけていた際の行方不明事件
ゆえ、その反省?負い目の気持ちを容赦ないWeb民の攻撃に晒され、
切れまくる.

加えて手がかりが得られないまま世間が忘れていくことに焦り、また憤る.
街頭でビラを配り、テレビの取材を受け、必死に情報提供を呼びかける.
自分と同じテンションで娘を案じてくれない夫に、娘を預けたのに目を
離してしまった弟に、移り気なメディアに、無神経で無責任なネット民に、
そしてすべての自分以外の他人に対して牙を剝き、暴言を吐く.

はなから綺麗な女優とは思っていなかった、特に化粧の仕方や顔の角度
で、唇がタラコのように映る瞬間があって気になっていた. ところが本作では
そのタラコ唇顔のオンパレード.ほとんどノーメイクに近いし、映され方に
気にしてないし、吉田恵輔監督も容赦なく女優石原さとみの素顔を晒し
まくる.

周囲にとっては迷惑でしかない存在のような行動もとる.同じ地域で起きた
似たような年齢の女子の誘拐事件に我が子の事情も重ねてしまい、
その子の捜索願いビラまで自費で制作して配るのには、吉田監督らしい
苦笑ネタの挿入であった.
 

 

転じて、戸惑いながらもそんな妻に引き回される夫豊を演ずる青木宗高は
落ち着いた演技で観客の同情を一心に集める.従来の不気味さを演ずる
上手さは封じて、落ち着いた演技を見せてくれる.最後半に誹謗中傷を
繰り返すWeb民を訴訟して見せたのは喝采もの、唯一すっきりしたエピで
あった.

地方TV局の記者・砂田:中村倫也が上司の求める視聴率と被害者への
寄り添いを両立できない事への葛藤を延々と最後まで演じ切っていたのも
従来の彼のイメージとは違う演技で好感が持てた.マスゴミの描き方は
他作品と同じようで新規感はないのだが、その在り方に悩む直接関係者
の描き方は視点の変化を感じた.
 

 

まぁ暴れ狂うのは一人の役者で十分で、他の役者の落ち着いた演技で
バランスがとれようというもの.結果としてどちらも引き立つのだから.

 

吉田監督の作品「ヒメアノール」「空白」「犬猿」…の終わり方から、
本作も、行方不明の娘は決して見つからないのだろうと言うことは予想
がついた.案の上の結末は、或る意味予定調和かも.

さて、本作で一皮剥けた石原さとみ、次の作品の役が難しかろうな….