映画「碁盤斬り」…予定調和、でも面白い. | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



製作年:2024年 製作国:日本 上映時間:129分



白石和彌監督、草彅剛主役という前情報だけで公開初日に観に行ってしまった.
観たら大好きな清原果耶や斉藤工は出ているはで狂喜乱舞してしまった.
本年度累積110本目の鑑賞は珍しく時代劇を選んでみた.
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「孤狼の血」「凶悪」の白石和彌監督が初めて時代劇のメガホンをとり、
「ミッドナイトスワン」の草なぎ剛を主演に迎えて描いたヒューマンドラマ.
古典落語の演目「柳田格之進」を基に、冤罪事件によって娘と引き裂かれた
男が武士の誇りをかけて復讐に臨む姿を描く.

 



身に覚えのない罪をきせられたうえに妻も失い、故郷の彦根藩を追われた
浪人の柳田格之進は、娘のお絹とふたり、江戸の貧乏長屋で暮らしていた.
実直な格之進は、かねて嗜む囲碁にもその人柄が表れ、嘘偽りない勝負を
心がけている.

そんなある日、旧知の藩士からかつての冤罪事件の真相を知らされた
格之進とお絹は復讐を決意.
お絹は仇討ち決行のため、自らが犠牲になる道を選ぶが…….



 

草なぎふんする格之進の娘・お絹を清原果耶が演じるほか、共演には
中川大志、奥野瑛太、音尾琢真、市村正親、斎藤工、小泉今日子、
國村隼ら豪華俳優陣が集結.
「凪待ち」「クライマーズ・ハイ」の加藤正人が脚本を手がけた.

以上は《映画.COM》から転載.
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萬屋源兵衛:國村隼と柳田格之進:草彅剛が碁に興じている時に
紛失した五十両を盗んだと疑われて、娘:清原果耶を吉原に預けて
五十両を工面する…というのが原案の落語の部分らしい.

 

 

オリジナル脚本はそれに格之進が藩を追い出されてしまったいわれの
パートと仇となる柴田兵庫:斉藤工との確執が追加されていて、きちん
とした物語が形成されていた.

2時間以上の比較的長めの尺なれど、飽きることなくそれぞれの役者の
演技を楽しませてくれた.前半の草彅剛の静の演技はしっとりと落ち着いて
いて好演であった.碁好きの浪人、訳あって藩を追われ江戸の長屋で
娘:清原果耶と二人暮らし.妻は自死してしまったらしい.
 

 

碁を通じて、両替商萬屋源兵衛:國村隼と知り合いになる.源兵衛は最初は
あこぎな碁の打ち手であったが、格之進の「正々堂々と打つ碁」に感銘を
受け、碁の教えを請う仲になる.悪から善という切り替えも納得させる貫禄の
演技を見せる.
 

 

娘お絹を演ずる清原果耶は前髪を上げて大奮闘.楚楚とした美人ゆえ、
日本髪も着物も姿勢良く似合っている.父をしかり飛ばす威勢良さも
持ち合わせる良妻賢母系の演技を楽しませてくれる.

敵役の斉藤工は憎々しく、されど藩内での格之進の“正々堂々”な仕事ぶり
の陰で、家禄を落としたり無くしたりで泣いている人々の存在も格之進に
訴える正義感をも訴えてみせる.口から出任せの感もなきにしもあらずだが、
格之進はそれを信じ、斉藤工の首をはねた後、それらへの人々への償いの
行動をとろうとする.

 

 

碁のルール、仕組みは良く知らないのだが、本作で主人公格之進が

打つ碁の正々堂々さというのはそれなりに表現されている気がした.

観る者にそう感じさせる演出と演技は“本物”を感じさせる.

最後の深川での兵庫と格之進の碁の一騎打ちのシーンは緊迫度マックス、
不利と見た兵庫の一太刀から始まる大格闘のシーンは大迫力であった.
草彅剛の、静から動への演技の切り替えも見事であった.
 

 

時代劇でも定番のものは嫌い.今上映中の「鬼平犯科帖」なんかその典型.
観る前から結末が見えてしまっているようなドラマは勘弁なのだ.
時代劇と言えども、行く末が見えないアンノウンなドラマが観たいのだ.
本作どうなることかワクワクさせながらも、とどのつまりはハッピーエンド.
こういのが好きなんだなぁ…(笑).

白石和彌監督、結局予定調和なのだけど、うまくまとめたと感心した次第.