映画「神探大戦」…引き込んで放さない驚異のテンポ感. | チャコティの副長日誌

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猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
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原題:神探大戦 Detective vs. Sleuths 製作年:2022年
製作国:香港・中国合作 上映時間:101分



なにか愉快そうなポスターに惹かれキネマ旬報シアターで観たのは
中国本国資本による香港製作品.まだ香港映画の息吹を感じられるか
興味半分で観てみた.本年度累積87本目の鑑賞.
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「バーニング・ダウン 爆発都市」のラウ・チンワンが主演を務め、中国で
大ヒットを記録したサスペンスアクション.かつて「神探」(神の捜査官)と
呼ばれた元刑事が、香港を震撼させる連続殺人事件に挑む姿を描く.

ジョニー・トーとワイ・カーファイが共同監督を務めた2007年製作の映画
「MAD探偵 7人の容疑者」の後日談的作品で、本作ではカーファイ監督が
単独でメガホンをとった.2023年・第41回香港電影金像奨で監督賞・
主演男優賞・脚本賞・撮影賞を受賞。2022年・第35回東京国際映画祭
でもガラ・セレクション部門で上映された.

ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の「未体験
ゾーンの映画たち2024」上映作品.

以上は《映画.COM》からの転載.
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中国映画と言っても、資本だけで中味は香港映画.撮影舞台も香港.
出演者、監督も香港出身だ.中味が非民主主義とかプロパガンダ臭が
無ければ、金だけ出してくれれば良いと思う.

「MAD探偵 7人の容疑者」の後日談的作品と映画.COMの解説にはあるが、
そんな作品知りもしないし、観たこともない.いまさらあえて観たいとも
思えない題名だよね(苦笑).

香港の街で猟奇殺人事件が発生、“神探“(神の捜査官)という巨大な
文字が残されていた.その頃かつて“神探”と呼ばれた刑事だったが
深刻な精神障害により職を追われたリー:ラウ・チンワンは独自の捜査
で殺人事件を追うがリーを嘲笑うかのように次から次へと殺人事件が発生、
しかもそれらの事件の犠牲者にはある共通点があった.
 

 

この設定に驚かされるのだが、主人公リーは完全に精神異常者.
精神分裂症で、幻視幻聴症で、多重人格ときている.
犯罪者の声が聞こえたり、悪魔が見えたり、とか死者、もしくはこれから
死ぬ人の霊魂と対話が出来る霊能力者でもあるみたい.

よって誰よりも早く殺人現場に駆けつけるわけなのだが、殺された人間の
霊魂と会話しながら街中を走り回るわけで、どうみても周りから見たら
頭おかしい人間にしか見えない.

演じているラウ・チンワンの表情が真剣そのものなので、ギャグには
見えない.ただひたすらに狂気でぐいぐいと画面を引っ張っていく.

そんなキテレツな狂人とコンビを組むのは妊娠中の女性刑事イー・チョン:
シャーリーン・チョイ.別に上官でもなんでもないリーの奇行に振り回されながら
犯人を追う中で自らの閉ざされた過去にも向き合うことになるという怒涛の
展開は猛烈にスピーディで脳裏に浮かぶ疑問符を片っ端から蹴り飛ばして
いく…もうこのテンポに付いていくのが精一杯なのだ.

脚本的にも、過去起きた凶悪事件の被害者の家族や主人公リーの娘とか
女性刑事イー・チョンの過去であるとか伏線だらけで、それらを束ねて
まとめてみたかと思うと、それをまた逆転するようなひねりも見せる.

怪しげな行動を見せる刑事とか、2重3重のミスリードが仕込んである
複雑なプロットに翻弄された後のクライマックスには派手なアクションも
控えている. もうフルコースの中華料理を食べているような満腹感(笑).

最後は早くから別れた実の娘を失い涙する狂人元刑事リーなのだけど、
もう少しこの娘との別れのいきさつを説明する部分が欲しかったかも.
無理くりのお涙頂戴としか見えなかった.

香港ノワールというより、凶悪極まりない猟奇サイキックコメディアクション
スリラー…の印象.とにかくうむを言わさないテンポの良さは特筆すべきだ.