映画「セットアップ」 (DVD)…出番は少ないがブルース・ウィリスの光る演技. | チャコティの副長日誌

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主役になれない人生を送るおじさんの心の日記.
猫と映画、絵画、写真、音楽、そしてF1をこよなく愛する暇人.
しばし副長の心の彷徨にお付き合いを….



原題:Setup  製作年:2011年
製作国:アメリカ  上映時間:84分



ちょい古の、まだブルース・ウィリスが元気だった頃の作品をレンタル棚から
選んで観てみた.本年度累積30本目の鑑賞は米製サスペンスクライム作品.
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人気ラッパーの50セント、ブルース・ウィリス、ライアン・フィリップの主演で
描くクライムドラマ.

犯罪都市デトロイトで兄弟同然に助け合って生きてきたサニー、ビンセント、
デイブの3人は、500万ドルのダイヤ強奪計画を成功させるが、ビンセントが
裏切りダイヤを持ち逃げしてしまう.その過程でデイブは死に、サニーは重傷
を負う.サニーは復讐と裏切りの真実を暴くためビンセントを追う.

以上は《映画.COM》から転載.
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一応主役はサニー:カーティス・“50セント”・ジャクソンとなっている.
ラッパーらしいが、全然知らない.もとからラップなんて音楽とは認めて
いない副長.認める以前に大嫌いなのだ.英語であろうと日本語であろうと
その形態をことごとく全否定している.

それは置いて、この主人公サニーを中心に置き、その視点で語られる
クライム・ストーリーはユニークだ.冒頭でサニーは「幼い時の夢が神父に
なることだったが、今はただの悪人だ」と嘆いている.
これこそがこの映画の内容を暗示していると思えた.
 

 

ダイヤモンド強奪事件を起こすが、裏切り者ビンセント:ライアン・フィリップ
によって友人デイブは射殺され自身も危うく死ぬところだった.胸に下げた
十字架によって弾がそれて助かったのであった.
十字架に救われる…それも何か暗示的ではある.

サニーは裏切った友人ビンセントを探す.
その友人は、裏切ったお金で収監されている父を救いたかった.
親父を殺されたくなかったら金を払えと脅迫している連中も、ダイヤ強奪に
加担した奴らなのだろう.彼の選択肢は裏切りしかなかった.友人を射殺して
までのことだった.

さて、肝心のブルース・ウィリスだが、出番は少ない.シンジケートのボス役.
長大なリムジンに乗り、部下を使ってゆすり、脅し、殺し…と悪行に事欠かない.
それでも、警護に囲まれたビンセントを襲うべく助力を願いにきたサニーに
力を貸そうとする.
 

 

リムジンの中でブルース・ウィリスとサニーの会話が面白い.
ウィリスがサニーに説く、「若い人はすぐ生き急ぐ、もっと落ち着け」と.

神を信ずるかと問うサニー.ウィリス曰く「信じてはいるが、教会で教わる神とは
違う神」だと. サニー自身も何度も教会へ通うシーンがある.おとずれる度に神父に
信じよ、されば救われると諭されるが、サニーも自分の神はそうは言わないと
無視する. ある意味、サニーとシンジケートのボスは同じ種類の神を信じて
いるのかもしれない…と考えさせられた.
サニーとボスの奇妙な信頼?関係を示すシーン.

この時期のブルース・ウィリスはまだ認知症の気配は微塵も無く、しっかりした
口調のセリフ回しであるし、なにしろ目の演技が素晴らしい.
相手をじっと見据えるその目の迫力が半端無いのだ.こんなB級作品でも
演技に手を抜いていないのがよく判った.少ない出番でも大きなギャラを
もらう価値のある演技であった.

リムジンで乗り込んだボスとサニーはマフィア&ビンセントと結局は撃ち合い
に転じてしまう.肩を撃たれて倒れるボスを尻目にビンセントを追いかける
サニーの追跡劇が派手にくり広げられる.

そしてついにビンセントを捕らえたサニーは、なぜ自分を裏切ったか問い詰める.
そしてビンセントは牢獄に入っている父親の命を守るために巨額の金が必要
だったことを白状する.

最後のシーン、ビンセントの足を打ち抜いただけでサニーは去ってしまう.
サニーが独り言を言う「目には目をじゃ終わりがない…」
これは従来の同じジャンルの新しい視点.人間ドラマとしても面白かった.
B級の中では好作品.