原題:Gran Turismo 製作年:2023年
製作国:アメリカ 上映時間:134分
昨秋公開時は無視してスルーした作品.大好きなニール・ブロムカンプ監督の
最新作なのにね.理由は後述.レンタルDVD化されたので暇つぶし?に観ようかと.
本年度累積9本目は米製自動車レース物作品.
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世界的人気を誇る日本発のゲーム「グランツーリスモ」から生まれた実話を
ハリウッドで映画化したレーシングアクション.
ドライビングゲーム「グランツーリスモ」に熱中する青年ヤン・マーデンボローは、
同ゲームのトッププレイヤーたちを本物のプロレーサーとして育成するため
競いあわせて選抜するプログラム「GTアカデミー」の存在を知る.
そこには、プレイヤーの才能と可能性を信じてアカデミーを発足した男ダニーと、
ゲーマーが活躍できるような甘い世界ではないと考えながらも指導を引き
受けた元レーサーのジャック、そして世界中から集められたトッププレイヤー
たちがいた.想像を絶するトレーニングや数々のアクシデントを乗り越え、
ついにデビュー戦を迎える彼らだったが…….
主人公ヤンを「ミッドサマー」のアーチー・マデクウィ、GTアカデミーの設立者
ダニーをオーランド・ブルーム、指導者ジャックをデビッド・ハーバーが演じる.
監督は「第9地区」のニール・ブロムカンプ.
実在のヤン・マーデンボローがスタントドライバーとして参加している.
以上は《映画.COM》から転載.
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ゲーム機のプレイステーションはPS-2までで、以降は娘宅に任せている.
“グランツーリスモ”のソフトは未体験、F1専門だからね(笑).
縁もゆかりも無いプレステだけど、実は大の日産嫌い(笑).
会社の体制、生産品質への不信、モータースポーツへの取組方、その車
自体のデザイン、技術ポリシー…全てに全否定なのだ.“e-Power”なんて
腐った内燃機関の無駄使いの技術ポリシーだと思う.数年前の不正検査
事件なんて、生産者としては言語道断の出来事だったよね.
旅先のレンタカーでも日産車は拒否する.他車ならウェルカムだ.
とにもかくにも日産を毛嫌いしている.在仏時も本作みたいに
ルマン24Hに日産が参戦していたが、一切応援なんかしてない.
マツダは応援の甲斐あって優勝したが….
そんな理由で、大好きな監督の作品であっても公開時は無視した.
e-sportsへの偏見も少し持ち合わせている.e-sportsのプレーヤーが
本物のプレーヤーになるなんて、自動車レースソフトくらいのものであろう.
本作はその稀有な実話から起こした物語.
見事それを実現させたのは、ヤン・マーデンボロー:アーチー・マデクウィ.
ゲームの“グランツーリスモ”に毎日のめり込む青年だった.
そんなある日、人生を変える知らせがやってくる.
“グランツーリスモ”を製作したゲーム会社“SCE”と大手自動車メーカー
“日産”の主催で、ゲームプレイヤーをレーシングドライバーに育成する
プログラム“GTアカデミー”の存在を知る.
その訓練を受けられるのは、ゲームの成績優秀者10名のみ.世界中の
参加者の中から、ヤンは見事10名の中に残った.
“グランツーリスモ”に熱中するヤンは、子供の頃からカーレーサーになる
のが夢であった.親の反対を押し切ってその第一歩を踏み出す.
ヤン始め候補生10名は、ゲームでレーサー並みにコースやレースを走っている.
ある程度のスキルや知識はある.でもやはりそれは、ゲームの中の話.実際は違う.
身体に掛かるG、ハンドルの重さ、体力作り…が必要とされる. 加えて決定的に違う
のは、危険とアクシデント.ゲームでは失敗したらリセットすればいいが、実際は…
最悪、死を意味する.
そんな過激なしごきにも耐えるヤンをアーチー・マデクウィがフレッシュに好演.
日産のモーター・スポーツ・ディレクター、ダニーになんとオーランド・ブルーム.
GTアカデミーの創設とか日産本社の説得とか、陰に日向に活躍する様を演ずる.
抜群の存在感を魅せるのは、デヴィッド・ハーパー.GTアカデミーのチーフ:ジャック
を演ずる.ジャックは、当初はGTアカデミー批判側.ダニーから説得されてやっている.
ヤンたちの事も侮辱するが、ヤンが才能を開花させ、認めていくようになる.
いつしかそれは、自身が諦めた夢をヤンに託すようになる.ヤンをしごき、鼓舞し、
支え….事故の後塞ぎ込むヤンに自身の過去を語り、再びヤンを奮わせる.
ヤンもある時、自分を鍛え導いてくれたジャックに恩返しのプレゼントをしたり….
ヤンのサクセス・ストーリーも熱いが、二人の師弟関係も熱い.
ブロムカンプ監督がこんな真っ当な王道の展開の映画を撮ったことに驚き.
懐の深い監督なのが分かった.なによりブルーカラーな主人公がブルジョアに
戦いを挑んでいくという作劇の構図も、ブロムカンプ作品の軸芯にある
共通した哲学の発露であろう.
ストーリーは事実に基づいているが、むせかえるようにエモーショナルな加工
と視覚演出がほどこされ、そこもまた彼らしい.ゲームをやってるヤンの身体に
車の透明のカバーが被さってきてスタンバイしてスタートするシーンだったり、
ある時は、透明な車の枠組みがバラバラに分解して細かいパーツに分かれて、
元に戻るとか、ゲームとリアルの融合したデジタル映像が新鮮だった.
実在のヤン・マーデンボローのリクエストで「NISSAN GT-R NISMO GT3」を
使用したり、冒頭でヤンが警察から逃げるときの「フォルクスワーゲンコラード
VR6」なんてあまりに渋すぎて涙がちょちょぎれそうだった.
最後のルマン24の使用車はさすがにリジェから借用した「ル・マン プロトタイプ
(LMP)2」にNISSANのカラーリングをした偽物でしのいでいたがこれは致し方
あるまい.なぜここだけ日産の支援がなかったのか不自然.まぁ日産だからね(笑).
ストーリー展開は王道だけど、それを超えてくるレースシーンの迫力と、カメラ
アングルが素晴らしい. 金さえ潤沢に使わしてくれるなら、こういう作品の作り方
でも魅せてくれるブロムカンプ監督のシュアな実力を見せつけてくれた作品.
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