日本の行政組織はすべてが中央に集中していることは事実であるが、霞ヶ関の内部では各省あるいは各局ごとにこれまた徹底して分権されている。これが縦割り行政といわれるもので、各省の局長、事務次官がそれぞれに独立した権力者なのである。
総理大臣といえども、これら権力者全員の同意を得て動くしかなかった。これ、が「官」による「政」のコントロールの実態である。閣議が事務次官会議で全員一致で決まった議案を承認する機関に成り下がっている真の理由がここにあり、阪神・淡路大震災やペルーの日本大使館の占拠事件など、危機の時にその限界が浮き彫りになった。
内閣機能の強化の狙いも、こうした官僚独裁の打破にあった。たとえば、国の内閣府のなかに、国務大臣、学識経験者などからなる「経済財政諮問会議」、「総合科学技術会議」、「中央防災会議」および「男女共同参画会議」を置くことになった(第十二条三項)のも一例である。
「経済財政諮問会議」を例にとると、首相、官房長官、関係大臣、有識者によって構成し、予算の編成など国の経済、財政の基本事項に関する政策立案を「政」主導で行うとされていた。予算はこれまで大蔵省、つまり官僚主導で編成されてきたので、もし、「経済財政諮問会議」が予算の基本方針を決定するようになれば、「政」の「官」に対する優位の確立におおいに役立つはずだった。しかし、第五章でみるように、「官」はこうした構想を反故にする逆転打を用意するのである。
欧米先進諸国へのキャッチアップを課題とした時期に形作られた現行省庁制度は、今日にあってはその総合性、機動性、効率性、透明性、国際性等の各側面においてさまざまな機能不全を生じている。しかし、二十一世紀の行政は次のような課題に応えなければならない。
(一)国際社会の平和と繁栄への貢献、国家主権の確保。
(二)わが国の平和・安全秩序の維持・確保。
(三)健全な財政の確保、通貨の安定、金融秩序の維持。
(四)産業競争基盤の維持・向上による強靭な経済の形成。
(五)国土の整備・開発・利用・保全。
(六)食料・干不ルギーの安定供給の確保。
(七)環境の保全と自然保護。
(八)少予局齢社会における国民生活・福祉の向上。
(九)創造的な人材の育成と先端科学技術、学術や文化の振興。