神秘と奇跡 | Centotrenta 代表 加藤いさおのBLOG                        

実は

妻が妊娠していまして

予定日が6月2日だったのです

私の、欧州出張が6月13日

初産は遅れることが多いと、友人に聞いていたので

冷や冷やしていたわけなのですよ

 

生命がお腹に宿り

男性である私は、客観的に

「母」へとどんどん変わってゆく妻を見ていて

「凄いことだな」と思っていたわけなのですよ

 

「なんとか予定日までに出てくれたら良いのにな」と

互いに言っていたのですが

昨日

早朝に妻が私を起こす

「陣痛がきていて痛すぎる」

 

寝ぼけていた私は

「え?嘘やろ」と問いかけると

今まで見たことないような

苦しそうな顔を見て

「これは・・・現実だ」と

一気に目が覚め

慌ててタクシーを呼び

妻の腰をさすりながら

かかりつけの総合病院に向かいました。

 

今は、コロナ禍で大きな病院は

面会もできないですし

勿論立ち会うこともできない

 

看護師さんが

「ここからは私が連れて行きますので

ご主人は一度総合受付前の待合室に居てください」と

言うので

私は、借りてきた猫のよふに

連絡を待っていました

 

程なく

「入院になったから、帰っていいよ

もしかしたら今日の夕方くらいに産まれるかも」と

妻からラインが来ました

 

気が気でない私は

そのまま仕事へ向かいます

 

昼過ぎに友人が遊びに来ていたので

「今日父親になるかもしれん」と言いながら

ソワソワを抑えることができませんでした

15時頃、妻から着信が入り

「うわ、生まれたかも!」と友人に言い

電話を取ると

朦朧とした妻の声が微かに聞こえ

「心音が・・・・」と言う

私は「??」となり

すかさず

相手が変わり

「もしもし、赤ちゃんの容態が急変しました

このままでは最悪の事態になりかねません

緊急で帝王切開になります

万一のこともありますのでご主人

至急病院に来てください」と言う

 

天国から地獄・・・

事態が把握できず

私は取り乱した

様子が変なことに気づいた友人が

「どうした?」と尋ねてくる

 

気が動転して

「とにかく病院に行ってくる」と言うと

 

「いさお、どうやって行くねん俺が送ったる」と

車に乗り込んだ

 

道中2人無言で

「こんな、こんな残酷な結末ってあるのか?」と

頭の中がぐるぐるしまくって

あまり覚えていないのですが

とにかく病院に着き

裏口から「加藤です」と名乗り

産科に向かいました

担当の方が「奥様は手術中ですので

また看護師が説明に来ますので

こちらでお待ちください」と言い残し去っていった

 

人間ってのは都合の良い生き物で

この時だけ

初めて神頼みをした

「自分の命と引き換えにどうか妻と子供の命を救ってください」

それのみである

何度も何度も祈った

「神様、僕は何か悪い事をしましたか?

一生懸命に今生きています

こんな残酷な事があるのですか?」

 

無責任な僕の心の叫びと祈り

それがずっとリピートされる

二時間後

「加藤さん」と一人の看護師さんがきた

悲痛な顔をしている

私は、絶望した

妻が嬉しそうにお腹にし話しかけているあの姿を

思い出しながら

フライングで赤ちゃんグッズを嬉しそうに買っている姿

そんな事を思い出しながら

僕は半ば放心しながら聞いていた

何を聞いたのかもわからないが

最後の一言を聞きとった

「おめでとうございます」

「え?」

「男の子です」

「妻は?息子は無事なんですか?」

 

「はい、奥様も手術が終わり

息子さんはNICUに入っています」

昔で言う保育器のことらしい

私も、産まれた時はそこに入っていたらしい

 

「ありがとうございます」と言いながら

涙がポツンとこぼれ押ちた

緊張と絶望という魔物から解放された矢先

全身から力が抜けた

 

「奥様が上がって来られました

退院まではもう会えないので

麻酔で意識が朦朧としていますが

一声かけてあげてください」と

看護師と共に向かった

 

妻がぐったりとしていた

「よく頑張ったな、ありがとう」と声をかけると

朦朧とする意識の中で

「赤ちゃんは?」と私に尋ねてきた

「無事、やで」と言うと

妻は安堵したかのように目を閉じた

 

疲れがピークに達したのだろう

 

また待合室に戻ると

内科医の先生が来て

一緒に説明を受けた

 

出産とは何が起こるかわかりません

本当に危険な状態だったと聞いています

赤ちゃんの検査をしましたが

健康です

今は奥様の麻酔が胎盤から伝わり

管を通して眠っています

会いますか?」

 

「はい、御願いします」

 

NICUの受付で

検温と手洗いを済ます

 

ビデオ説明があり

それを鑑賞して

 

息子に会う・・・・・・・

「さ・・・・猿?噂に聞いていたけど

新生児って猿やん」

初対面の印象が「猿」だった

そんな事を思える余裕が出た

まだ実感が湧かない

「保育器の扉を開けて触っても良いですよ」と

おっしゃるので

おそるおそる触ってみた

 

 

温かい・・・・生命を感じた

ボロボロと涙が出た

赤ちゃん言葉も出た笑

 

妻に面会は無理だが

Nicuに息子が居る間は

面会が許可されているらしく

本日伺うと

 

管も外れていて健康そのものだった

うまくいけば

妻と同室になり

退院も同じ日にできるらしい。

 

 

 

 

この世に尊い命が誕生する奇跡を

目の当たりに見た。

なんて素晴らしくて神秘的なんだ

 

息子よ

母が命懸けで産んでくれた

息子よ

 

君と家族を

この命をかけて守ろう

 

常に正直に

己の誠を通し

嘘偽りのない

人に優しい人間に育っておくれ

 

だから

君の名前を

誠十郎(せいじゅうろう)と名付けたんだよ

 

産まれてきてくれて

本当にありがとうございます。

 

5月27日 16時 加藤 誠十郎 誕 3192g