前回に引き続き、
「恋愛体質 - 30歳になれば大丈夫」( 2019 JTBC )の 4回目。
主人公は
(左)映像ドキュメンタリ監督 イ・ウンジョン(チョン・ヨビン)
(中)新人ドラマ作家 イム・ジンジュ(チョン・ウヒ)
(右)ドラマ制作会社チーム長 ファン・ハンジュ(ハン・ジウン)
30歳を迎えた大学同期 3人組の仕事や恋愛、日常の悲喜こもごもを詳細に描きます。
このドラマはパロディが多いと紹介されるのですが、それがあまりにも細かい。
両親に、師事するドラマ作家の代表作を聞かれたジンジュの答え。
「熱血牧師」「卓球王キム・ジェパン」
「熱血牧師」⇒「熱血司祭」( 2019 SBS )
これはまあ簡単。
そういえば「熱血司祭」は企画案では「熱血神父」だったが、
「熱血新婦」に聞こえるため「司祭」に変更したとか。
確かに「熱血新婦」ではホームコメディかシットコムみたいです。
「卓球王キム・ジェパン(製パン)」⇒「製パン王キム・タック」( 2010 KBS2 )
キム・タックの漢字表記が金卓求
「『卓球』ではなく『卓』越を『求』めるタック」という主人公の自己紹介をひねりました。
同名の WEB 小説もあるようです。
話がいきなり横滑り。
ジンジュの師事する有名ドラマ作家、チョン・ヘジョン(ペク・ジウォン)がかなり面白い。
普段は成功者にありがちな自己中心的な毒舌家なのに、酔うと人格が崩壊。
ウサギに変身してそこらじゅう跳ね回ります。
へジョンウサギを追うのに疲れた飲み友達のソン・インジョン ドラマ局長(チョン・スンギル)が、「俺は帰りたい!」と叫びます。
これは映画「ペパーミント・キャンディー(薄荷飴)」( 2000 )のキム・ヨンホ(ソル・ギョング)
「ペパーミント・キャンディー」は 1980年に起きた「光州事件( 5・18 民主化運動)」をきっかけに、図らずも社会のダークサイドを歩まされた男の葛藤と絶望を描いた、とても真面目な映画です。
以前、真面目に紹介しました。
へジョンのもうひとりの飲み友達、
芸能事務所のシニカルなソ代表(パク・ヒョンス)との場面。
個人的にですが、映画「私の頭の中の消しゴム」( 2004 )スジン(左 ソン・イェジン)とチョルス(右 チョン・ウソン)を模したように思えます。
「私の頭の中の消しゴム」の決めセリフ
「これを飲んだら、俺たち付き合うんだ」
「飲まなかったら?」
「もう会う事は無いだろう、死ぬまでな」
こそ出て来ませんでしたが。
けれども、酔ってもヘジョンがウサギにならず、ソン局長と雨の中を傘ひとつで歩く場面。
これがセリフを含め
「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」( 2018 JTBC )
ユン・ジナ(ソン・イェジン)とソ・ジュニ(チョン・ヘイン)の忠実な再現なのです。
おそらくロケ地も同じはず。
「恋愛体質」「 …綺麗なお姉さん」が同じ JTBC 金/土ドラマ枠というのが主な理由ですが、ドラマ作家へジョンがソン・イェジンを理想、あるいはライバル視している行動のような気がするのです。
ちなみに、ソン・イェジンといえばの「愛の不時着」( 2019-20 tvN )は放送前。
こうした大がかりなパロディは他には無く、ほとんどがセリフでのやりとり。
ドラマ監督ソン・ボムス(アン・ジェホン)とジンジュの会話。
「作家なら彼氏はいない? 神経質だから」
それを受けたジンジュが、
「監督なら彼女はいない? 性格が悪いから」
「太陽の末裔」( 2016 KBS2 )のユ・シジン大尉(ソン・ジュンギ)とカン・モヨン(ソン・ヘギョ)
「医師なら彼氏はいない? 忙しいから」
「軍人なら彼女はいない? 厳しいから」
「愛だと? 笑わせるな。そんなもの金で買ってやる、幾らならいい!」
ハン・テソク(左 ウォンビン)がチェ(ユン)・ウンソ(右 ソン・ヘギョ再び)に叫びます。
元祖「壁ドン」といわれる「秋の童話」( 2000 KBS2 )
「また明日」
あまりにも細かいので、適宜ネタバレというか自己言及。
「それって『未生(ミセン)』?」( 2014 tvN )
チャン・ベッキ(カン・ハヌル)から同期のチャン・グレ(イム・シワン)への印象的なひと言。
「未生」の舞台「ワン・インターナショナル社」は、ソウル駅前の「ソウルスクエア」。
以前、「未生」ロケ地としてソウルスクエアを訪れました。
余計な事ですが、改めてチェックすると「また明日」はベッキのオリジナルではなく、カン・ヘジュン代理(オ・ミンソク)がベッキにかけた言葉の再現。
更なる自己言及。
「『応答せよ 1988 』成功の秘訣は… 」( 2015-16 tvN )
「『応答せよ 1988 』のジョンボンみたいな顔をして、何を言うつもり?」
「もしかして、ジョンボンの見た目を馬鹿にしてます?」
「応答せよ 1988 」ジョンボンと「恋愛体質」ボムス、双方を演じたアン・ジェホンをネタにするセルフパロディ。
そういえばソン・ボムス監督の代表作。
「舅は思春期」「キム社長は一体なぜ?」
「キム社長は一体なぜ?」は簡単
「キム秘書はいったい、なぜ?」( 2018 tvN )とすぐ分かります。
けれども「舅は思春期」の元ネタが、さっぱり分からない…
バンドの「赤頬思春期」( 볼빨간사춘기 Bolbbalgan4 )くらいしか思いつきません。
パロディではありませんが「その1」で取り上げた、
いきなりギターが出現、
「揺れる花の中から君のシャンプーの香りがした」を唐突に歌い出す場面。
相当にシュールな展開ですが
「ギターはどこから出てくるんだ?」
「ギターをどこから出す気ですか?」
「あのギターは何だ?」
と、第三者に見えている事が明かされています。
ギターが出てくる手順は飛ばすが見えている-妄想ではないことを示します。
こうした細かなディテールって意外と大事です。
とりあえずこのあたりまで、かなあ。