さて、今回はCHET BAKERのレコードを紹介してみたいと思います。今回の盤は、CHETがナイトクラブで見出した歌手のためにレコーディング・デビューをお膳立てして演奏まで買って出たもので、無名の歌手に対して豪華な演奏陣が共演している興味深い1枚であります。

「CHET BAKER INTRODUCES JOHNNY PACE」 (riverside)
ピッツバーグのナイトクラブでCHETと出会って意気投合した歌手、JOHNNY PACEのために吹き込んだアルバムで、演奏陣は、CHET BAKER(トランペット)、HERBIE MANN(フルート)、JOE BERLE(ピアノ)、JIMMY BURKE(ベース)、PHILLY JOE JONES(ドラムス)によるクインテット編成で、1958年の録音であります。PACEのことをとても気に入ったCHETは、当時契約していたriversideレーベルにPACEのデビュー・レコーディングの話を持っていき、さらに知り合いのミュージシャンを呼んで演奏まで務めています。ナイトクラブの歌手にすぎなかったPACEに対して、当時すでにスターであったCHETをはじめとした豪華なメンバーがそろっており、つり合いが取れていない印象は否めません。主役であるPACEは、ジャケット写真からもおわかりのようになかなかの男前です。唄い方としては、FRANK SINATRAのようなスタイルで、音程やリズム感は正確ですが、普通に上手いだけでこれといった特徴はなく、何がCHETを惹きつけたのかはよくわかりません。曲目はスタンダード曲でまとめられていて、「CRAZY, SHE CALLS ME」、「WHAT IS THERE TO SAY」などのバラード曲は味わい深いですし、「THE WAY YOU LOOK TONIGHT」、「IT MIGHT AS WELL BE SPRING」などのアップ・テンポの曲では、リズム隊も格好よく決まっています。CHET自身の愛奏曲でもある「THIS IS ALWAYS」は、トランペットのソロも素晴らしい出来ですよ。繊細な演奏を聴かせるJOE BERLEというピアニストは、変名で参加したBILL EVANSだろうと言われています。豪華な演奏陣を得て初めてのアルバムを吹き込んだPACEですが、残念ながらブレイクすることなく終わってしまい、僕の知る限りでは彼のレコードは本作1枚のみであります。とはいえ、少なくともジャズの歴史に名を刻んだわけで、演奏陣の豪華さによるものだとしても、CDになって現在まで再発されているわけですから、ナイトクラブの歌手だったPACEにとっては信じられないほどの名誉だったのではないかと思いますよ。
みなさま、ぜひ「BAKER」へお越しくださいませ。初めての方もお気軽にどうぞ。お待ちしております。
Bar BAKER
日野市多摩平1-5-12 タカラ豊田ホームズ107