さて、今回はCHET BAKERへ捧げられたレコードを紹介してみたいと思います。今回の盤は、日本のベテラン・トランぺッターによる枯れた味わいのある1枚であります。

「WAITING FOR CHET」 (open sky)
おもに北海道で活動しているベテラン、碇昭一郎(トランペット)さん率いるバンド「BAKER STREET」によるトリビュートで、井上祐一(ピアノ)さん、田中久雄(ベース)さんを加えたドラムレス・トリオ編成で、1996年の録音であります。このバンドのレコードについては、以前「BLUE BAKER」というアルバムの紹介を書きましたが、本作も負けず劣らずの力作であります。まず、碇さんの奏でるトランペットが晩年のCHET BAKERに通じるような枯れた味わい深い音色で魅力的です。碇さんは1986年のCHETの来日公演を聴いていて、「たとえ一ヵ所にとどまっていたとしても、人がどう生きるかによって充分深みのある表現が可能なのだ」と悟ったそうです。CHETについて「古いのだけれど古くさくはなく、叫ばないのだけど突きささる」と評していますが、自身もその路線を目指したのだろうということがよくわかる演奏です。ピアノの井上さんは流暢でありながらも音数は控えめで、お互いの演奏のためのスペース(間)は、しっかりと残した演奏です。個人的に、本作におけるいちばんの聴きものは冒頭の「MY FUNNY VALENTINE」です。CHET自身も数えきれないほど吹き込み、多くのミュージシャンも取り上げている名曲ですね。スローで演奏されることが多いですが、ここではテンポを上げて演奏しています。田中さんの奏でる心地よいベース・ラインに乗りながら、碇さんのトランペットと井上さんのピアノによる音楽的対話が繰り広げられており、聴き応えがあります。本作ではCHETの愛奏曲はこの1曲のみで、他の曲目をみると、CHARLIE PARKERの「ANOTHER HAIR DO」、DUKE JORDANの「THE FUZZ」、そして残りはオリジナル曲になっています。オリジナル曲では、アップ・テンポでうねるようなメロディ・ラインをもつ「DAYFLY」という曲がとても耳に残ります。CHETのような狂気はありませんが、枯れた味わい深い演奏に静かに浸りたい1枚でありますよ。
みなさま、ぜひ「BAKER」へお越しくださいませ。初めての方もお気軽にどうぞ。お待ちしております。
Bar BAKER
日野市多摩平1-5-12 タカラ豊田ホームズ107