先に,ギブソンのフェンダーライクなギターの例を紹介しましたが,じゃあ、逆はどうなのか?フェンダーはギブソンを真似たギターをつくっていないのか?
結論から言うと、ないわけではない。ただし、フェンダー・ギターのデザインは特異過ぎて真似ると一発で分かるのに対し、ギブソン系ギターというのは他にも類似例が多いので直接的な影響はよく分からないということです。
強いて挙げるとすれば、以下のホロー(中空)ボディギターなんかが該当するでしょうか。
●CORONADO
66年に登場したセミアコ。1PUがコロナドI,2PUがコロナドII,12弦がコロナドXII。他に特殊なフィニッシュを施したアンティグア(Antigua=antique),ワイルドウッド(Wildwood)がある。
ダブル・カッタウェイのfホール仕様は確かに伝統的なスタイルではあるものの,片側6連のヘッドとやや横長のボディフォルム等はギブソンとは随分雰囲気が異なって見える。同時期のフラットトップと同様ボルト・オン・ネック。PUはシングル・コイル。
コロナド・シリーズはすべて69-70年に消滅。
●MONTEGO ●LTD JAZZ
fホール,伝統的な3対3のペグヘッドのフルアコは,多少なりともギブソンを意識したものと思われる。
上写真左から1PUがモンテゴI、2PUがモンテゴII。定価はそれぞれ40万円,46万円(72年当時)
モンテゴ(Montego)…カタカナ表記にするとややクサいが…モデル名はジャマイカ北岸にある観光地に因んだものと思われる。フェンダーは60年代にマリブ、ニューポーターなど,同様に地名を転用したギターをいくつか発表している。
LTD(上写真/右端)はリミテッドの略と思われる。発売当初の修飾語「Hand Carved」でも分かるとおり、トップのスプルース板は手工削り出しで,段差をつけた「ジャーマン・カーヴ(German Carve)」を形成している。定価76万円(72年当時)。
いずれも69年に登場。PUはハムバッカー…だが,フェンダーの強固なポリシーに依るものか,何とこれもボルト・オン・ネックである! あまり成功しなかったようで,どちらも75年には姿を消す。
上記はいずれも、リッケンバッカーからスカウトされたロジャー・ロスマイル(Rodger Rossmeisl)の作品。彼は60年代にフラット・トップの制作も手がけていますが、70年代に入っていずれも生産中止になっています。「洗練」という言葉とは別次元の、今となってはちょっと古くさい,独自の雰囲気がありますね。モズライトでも有名な,先の「ジャーマン・カーヴ」はドイツ人であるロスマイルに因んだ呼び名だとのこと。
Rodger Rossmeisl
60-70年代フェンダーの一連のギターは,ボルト・オン・ネックなど独自のカラーを貫いた分,他社の影響をあまり感じさせないものになっています。
80年代以降については次回に。