ストラディヴァリウス | おんがく・えとせとら

おんがく・えとせとら

音楽のこと,楽器のこと,いろいろ。

strad

 嘘くさいドラマの多いのにうんざりして,最近は小説ともとんとご無沙汰,書店では専ら新書コーナーでノンフィクションを眺めることが多いのですが、かつては岩波ぐらいしかなかった新書に,知らぬ間に各社が進出してかなりの量になってますね。

 新興のアスキー新書から最近出た「ストラディヴァリウス」(税別848円)。
 他のブランドは知らなくても誰もが知るバイオリンの名器、本書は手軽にその歴史や特長を勉強できます。巻末には使用アーティストのリストも。著者はバイオリン製作家・写真家の横山進一氏。

 二胡なんかもそうですが、フレットレス弦楽器のなめらかな音色は,ギターのような撥弦楽器にはない艶がありますね。例えば,かぐや姫「神田川」のバックに流れるバイオリン,あの曲はバイオリンなくしては名曲たりえなかったやろねえ。

stradivarius Antonius Stradivarius

 さて,「ストラディバリウス」の作者アントニオ・ストラディヴァリ(Antonius Stradivarius)は1644年頃イタリアに生まれ、93歳で亡くなる直前までバイオリン製作を続けたらしい。で,製作本数については諸説あるが,バイオリンが700-750本,うち600本近くの存在が確認されているとのこと。

 詳しくは書籍で確認していただくとして,この本で興味を惹かれた点を二点ほど簡単に紹介しましょう。

 ひとつは,ストラディヴァリウスは生前既に高い評価を得て製品は高値で取引されており、18世紀頃には,それらをはじめとする名器を専門に収集するコレクターあるいは楽器商が存在したということ。
 ふたつめは,ストラディヴァリウスのコピー/クローンをつくろうと数々の制作者が,ニスを研究したり,薬品等を使って人工的に木をエイジングさせようとしたり試みたが,同じ音の出る楽器づくりには成功していない,ということ。

 いつの時代も同じことをやってるんやなあ。
 ヴィンテージと新しい楽器の差は,要は「時間」である。古い楽器が楽器の姿になってから経てきた時間というものは,人工的に作り出せません。
 その歴史的価値・骨董的価値も含めて,4億近い金額を投資する人もいます。(ストラディヴァリウスの1本が2006年5月,ニューヨークのクリスティーズのオークションにて約3億9千万円で落札されたそうです。市場に出ないところではもっと高値で取引されているかもしれない,とのこと。)

 さて,ポピュラー音楽ではオールド・マーチンやオールド・ギブソンのスタイルを踏襲したギターが本家や他メーカーからも出されてますが,ストラディヴァリウスにも同様のコピー・モデルというのが存在するようです。こういうのに,弱いんですよね,皆。本物は絶対手に入らないことが分かってるから。

violin Vincente sv220

 厳選された材料,信頼できるメーカーのパーツ…で定価25万円,結構高額。でも本物の4億とは比べ物にもなりません。
「バイオリニストを目指すなら信頼できる楽器を。100万近いものでないと良いものはない」とかなんとか言われて,かつてバイオリンを習わせてた娘のために泣く泣く財布をはたいたことがありましたが,受験に直面した時にあっさり止めちまいました。馬を水飲み場に連れて行っても飲むとは限らん,無理強いはアカンで! まあ,趣味でもエエから末永く弾き続けてもらえれば。うぅぅ…っ。


 こっちの本も面白そう。CD付きで,ヴァイオリニスト漆原啓子氏によるストラディバリウスと他メーカーのヴァイオリンの弾き比べが収録されてるらしい。

名器
CDでわかる ヴァイオリンの名器と名曲(田中千香士著/¥2,100/ナツメ社)