ギブソンVSフェンダー その2 | おんがく・えとせとら

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 80年代には、ロック式トレモロシステムやハムバッキングPU、アクティブ回路等を装備した所謂「スーパー・ストラト」が大流行しました。ギブソンとフェンダーのエエトコ獲りですね。

 スーパー・ストラトの起源は、アラン・ホールズワースあたりでしょうか。77年のブラフォード時代には既に、ハムパッカー付ストラトを使用しています。彼のはおそらく改造品ではなく、シャーベル(Charvel)あたりのネック、ボディを組み立てたコンポーネントではないかと思います。
 これに影響を受けたと思われるのがエディ・ヴァンヘイレンの自家製シャーベル・ギター。78年の衝撃のデビュー以降火がついて,いろんなメーカーから同工異曲のスーパーストラトが出て百花繚乱状態となり,現在に至る,と。
 
 ギブソンもそういった動向に無関心ではいられなくなり、何とか時流に乗っかろうと、80年代以降,ギブソン・ブランドでストラトキャスターもどきのギターを次々と発表します。

●ヴィクトリー(VICTORY)
victory3 VICTORY MV-2
MV10 VICTORY MV-10
 81年の発表。ハムバッカー×2がMV-2、センターにシングルコイルPUを追加した上位機種がMV-10。ヘッド、ボディともアレンジしてあるが、片側6連式のヘッド、流線形ボディ、ピックガード・マウント式のPU,レバー式PUセレクターで雰囲気はまさにフェンダー。トレモロアームを搭載していないところに、何とかギブソン色を残したいという、多少のためらいを感じる。(精度の高いトレモロシステムを持ってなかったためではあるけれど。)
 中途半端なコンセプトのせいか案の定不人気で、84年には姿を消す。著名使用ミュージシャンはいない。ネック、ボディはメイプル,指板はエボニー,セットネック。

●Qシリーズ
q-100 Q-100
Q200 Q-200
Q300 Q-300
Q4000 Q-4000
 Qシリーズはヴィクトリーの後を受けて85年に登場。ボディはヴィクトリーの形状を受け継いだものの,ヘッドはシャーベル/ジャクソン・タイプになっている。
 Q-100はハムバッカー×1の1PU。Q-200はシングルコイル×1,ハムバッカー×1の2PU。Q-300はシングル×3,Q-400はシングルコイル×2,ハムバッカー×1の3PU。いずれもシングルコイルはHP-90,ハムバッカーはダーティ・フィンガーズ。Q-300,Q-400は85年末にQ-3000,Q-4000と型番が変更になる。
 せっかく,ケーラーの廉価版ロック式トレモロ「フライヤー」を搭載したものの,これも不人気で翌86年には生産終了。

●US-1
us-1 US-1
 Qシリーズと入れ替わる形で86年に登場。カッタウェイの角が丸くなって一段フェンダーっぽくなったものの,メイプルトップ,バインディング付のスタイルがギブソン的。軽量化を図るため,ボディ内部核にはバルサ材が詰められている。
 フロント,センターは一見シングルコイル風だが,スタック式のハムバッカー。ケーラー・トレモロ付モデルもあったようだ。これは多少長続きして91年まで約5年間製造された。定価290,000円(88年当時)。

●U-2/MACH ll
SR-71 U-2
 87年に登場。バスウッド材のボディはUS-1とほぼ同じ形状だが、低音側のカッタウェイがやや深め。ヘッドはエクスプローラー・タイプ。こちらはフロイド・ローズ・トレモロが搭載されている。
 写真の個体のPUはS-S-H配列だが,オプションでハムバッカー×2のモデル,カスタムショップ製EMG搭載モデルもあったようだ。90年に「マッハ2」に名称変更され,翌91年に生産終了。

●WRC
WRC WRC
 これも87年中頃に登場。シャーベル・ギターの創始者ウェイン・シャーベル(Wayne Charvel)のデザイン。モデル名は彼の頭文字をとったものと思われる。Rはミドルネーム?
 ボディはお尻の方が非対称に流れて,ほぼストラト風に。肘が当たる部分は傾斜がつけられている。ボディ材はアルダー。シングルコイル風のフロント・センターPUはスタック式ハムバッカー。コントロールは各PUのオン/オフスイッチ×3,スタック式ボリューム・ポットでコイルタップ切替可。こちらにもカスタムショップ製EMG搭載モデルがあった。
 最初期のモデルはヘッドに「with Charvel」のデカールが貼られていたようだ。ヘッドデザインはアレンジされており,後に出るアカイのギターとそっくり。89年に生産終了。

●SR-71
 WRC同様,ウェイン・シャーベルのデザイン。カスタムショップ製で87~89年に250台生産された,S-S-H配列のPUを持つストラト風ギター。セットネック。写真がなく正体不明。60年代に開発された米軍の超音速偵察機に同名機があるが、名前の由来はおそらくそれでは。Wシャーベルはミリタリー・マニアだったのかも?



 …とまあ,手を変え品を変え開発してきたものの,不発の連続で,開き直ったギブソンはエピフォン・ブランドで奇策に出ます。
「EPIPHONE by Gibson」のストラトキャスター。
 80年代後半から90年代後半まで韓国で生産されたようです。ヘッドはシャーベル/ジャクソン・タイプからエクスプローラー・タイプあり,バットウィングあり。写真下へ行くほどだんだん再現度が落ちています。最後期はベニア板ボディ。ほんまにこんなんで「Gibson」の名前付けてエエの?…って感じもしなくはない。

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$おんがく・えとせとら-head

89epi カタログにも堂々と。