アラン・ホールズワースの使用ギター(1) | おんがく・えとせとら

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 アラン・ホールズワースの使用ギターについては,昨年末発刊のシンコー・ミュージック「JAZZ GUITARシリーズVol.12」に特集があり,本人のインタビューも交えて詳しく紹介されています。
 彼の機材は,不断の試行錯誤の成果なのか,デビュー以来約40年のキャリアの中でどんどん変化しています。ソロになる直前のブラッフォード時代まで,同誌の不足分を補いつつ,所属バンドの変遷にあわせてまとめてみました。

●1968 イギン・ボトム('IGGINBOTTOM)~1972 ニュークリアス(NUCLEUS)
igginbottom nucleus
 この時期のステージ写真は見たことないので,使用ギターは不明。
「イギンボトム」は服飾ブランドの名前を拝借したものと思われ,アルバム名「'Igginbottom's Wrench」(左)はさしづめ「ティファニー製スパナ」みたいなパロディでしょうか。どちらもブリティッシュ・ジャズ・ロック。

●1973 テンペスト
 メンバー全員の写った写真では,ギターのヘッド部が見えてますが,ロゴが読めずメーカーなり型番は不明。
 また,ブートレッグのジャケット写真ではステージで赤いES-335を使用している姿(右上)が見えます。アルバムではバイオリンも弾いてます。
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tempst Boot"POP SPECTACULAR"

●1974~75 ソフト・マシーン
sg_cst2
 74年モントルー・ジャズ・フェスティバルの映像で見られる白いSGカスタム。63-65年頃のモデルと思われます。PUカバー,バイブローラのカバーを外してあります。ピックガードも外してあり、ボディ左右とバイブローラの下部分にはステッカーが貼られています。フロント・リアPUのエスカッションは元々の黒から白に交換。前述の「JAZZ GUITARシリーズVol.12」掲載インタビューに出て来る「ライフタイム在籍時にマネージャーに勝手に売られてしまったSG」のうち1本はこれか?

 SGの使用はテンペスト時代の同僚・オリー・ハルソールgの影響とのこと。軽量である,高音部が弾きやすい,音が重過ぎない,ビブラートアームが付属している,というような点を評価してか,SGは数本所有していたようです。いずれも,65年頃までの指板のワイドな時期のモデル。

 2006年に,ホールズワース在籍時の未発表ライブ盤「Floating World Live」(75年1月ドイツ公演)が発売されました。とくに後半は長いソロで弾きまくっており,一聴の価値ありです。この時代に現在のスタイルが確立されたようです。
floating2 floating 右は日本盤

●1975 ニュー・トニー・ウィリアムス・ライフタイム
 マイルス・デイビスの片腕でもあったウィリアムスからの誘いに,この機会を逃してはと,結局ソフトマシーンを脱退。この時期の写真も見かけませんが、前期に引き続きSGカスタムがメイン・ギターだったようです。
 下の写真はマーシャルを使用していることから,この時期のものではないか? バイブローラの位置が動いている…。ソフトマシーン期のものと同じギターなのかどうかは分かりません。
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 前述「JAZZ GUITARシリーズVol.12」のインタビューで,ライフタイムの最後のツァーで「帰りの飛行機代を捻出するために,黒いSGカスタムをマネージャーに勝手に売られた」「もう一本の白いSGも既に売られてた」とあります。(同誌は見出しのつけ方を間違えてます。) しかも黒いSGは23,000ドルの売却代に対し手取り15,000ドル,8000ドルピンハネされてたとか! レアものとはいえ当時のレートで約700万円,ちょっと高過ぎ…ほかにも売られた機材があったのでは?

●1976 ソロ(Velvet Darkness)
 ジャケットで抱えているSGカスタムは手元に残っていたか,新たに買い直したものと思われます。エボニー製化粧板付きバイブローラのついた,おそらく62年頃のレスポール/SG。
 下は86年頃の写真。センターPUを外し,ピックガードを別に誂えて穴を隠してます。残りのPUはダンカン製に交換されていたようです。
 このギターは後に90年頃の来日時にサブギターとして持参され,その際にはセンターPUを復活させてました。
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●1977 ゴング
 資料がなく不明だが、ソフトマシーン路線の延長で,SGを使っていたのでは?

●1977 ブラッフォード#1
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 上は1枚目「Feels Good To Me」ライナーノートに掲載の写真から。黒いストラトを使用。黒いピックガード,ハムバッカー2個,バインディング付きのフラットな指板,もちろんビブラートアーム付き。後のメインギターの基本形がここに。フェンダーの改造品かカスタムメイドかは不明。

●1978 UK
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firebirrd2
「In The Dead Of Night」のプロモ・ビデオで見られる63~65年製あたりのギブソン・ファイアバードIII。
 ビデオはアテレコなので,ステージでも本当に使用していたのかどうか分かりませんが、もともとついていたミニ・ハムバッキングPUを2つともハムバッカーに交換してるのと,バイブローラはSGの頃から使い慣れているので,本人所有機には違いないでしょう。これも,バイブローラのプレートを外している。
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uk  
 ナチュラルのカスタムメイド・ストラト。ブラッフォードで使用のストラトと同仕様のようです。PUとボディを交換したものか? あるいはリフィニッシュか?
 下はホールズワース,ブラッフォード在籍時のU.K.のステージ写真。遠目で分かりにくいものの,黒いピックガードのストラト,左手にはSG?らしきギターとオベーションっぽいアコGがあります。アコGはジョン・ウェットンのかもしれない。

●1979 ブラッフォード#2
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 2枚目発表後の79年3月,英国オックスフォード・ポリテクニックで行われたライブのBBC放映映像が「Rock Goes To College」としてDVDで発売されています。ビル・ブラッフォードds,デイヴ・スチュアートkb,ジェフ・バーリンbという強者揃い,緊張感溢れる演奏は素晴らしい!のひとこと。1枚目に参加していたボーカルのアネット・ピーコックも2曲参加しています。
 ここでの使用ギターは,SGスタンダードとカスタムメイドのストラト。どちらもあまり歪ませず弾いています。アンプはブギーとマーシャルを足下のフットスイッチで切り換えて使用しているようです。
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 SGは,バイブローラのプレートを外してあります。トラスロッド・カバーに"Les Paul"の文字がなく,リアPU横のピックガードに止めネジがないことから,63-64年頃のものと推測。
 ストラトは,UKで使用していたものを,ネックあるいは指板を交換したものと思われます。ヘッドにブランドネームは無し。