最近では「ジョン・ウィック」で共演したウィレム・デフォーさんがゴッホを演じた「永遠の門 ゴッホの見た未来」を鑑賞してきました。
■公式サイト
1カ月前から前売り券購入。
■2010年6月にはオランダ、アムステルダムにあるゴッホ・ミュージアムに行きました。4時間くらいかけて鑑賞したかな。
映画は1888年のパリの時代からアルル、サン・レミ、オーヴェルで晩年を迎えるまでを描いています。
公式サイト>プロダクションノート>画家・監督シュナーベルのビジョン
(引用ここから)
「我々が心を惹かれたのは、ゴッホは晩年、自分が新しい視点で世界を見ていることにしっかりと気付いており、他の画家とは違った方法で絵を描いていたことだ。ゴッホは新しい視点で物事を見ることを人々に伝えようとしていた。我々はその新しい視点を描きたかったんだ」
本作でのゴッホは、ひとつのプリズムだ。そのプリズムを通して、シュナーベル、カリエール、さらには俳優やスタッフが、表現や共感という人間の本能を見つめ直し、驚くべき体験を与えてくれる映画を生み出した。さらには俳優やスタッフが、表現や共感という人間の本能を見つめ直し、驚くべき体験を与えてくれる映画を生み出した。シュナーベルは語る。「我々はみな、人生の終点を迎えるが、芸術は死という制限を超えることができる。映画の中のゴッホにはまだ信奉者がいないが、それでも彼は、自分がやるべきことをやり通す。ゴッホが畑に寝転がって顔に土をかけながら微笑んでいるのを見ると、決して哀れな人間ではなかったことがわかる。彼は、自分が存在すべき場所に存在すべきタイミングで存在していると感じ、生きていることを心から実感していたはずだ」
(引用ここまで)
こういう監督の視点は、子供たちや精神病院を訪れた神父との対話に現れているように思います。子供達が「実物のほうがきれいだよ」というと、「絵に描くと永遠になる」と微笑む。ファン・ゴッホが生きていた当時から変わらないアルルの風景がファン・ゴッホが見たかもしれない光景で描かれています。以前、ゴッホの描く静物画を見て、赤や緑の野菜よりは、ジャガイモ、玉葱の茶色、黄色に惹かれていたのかと思ったことがありますが(詳細はこちら)、ゴーギャンの回想で「彼は黄色が好きだった」とあって、ほぼ10年越しで答えをもらえました。
映画の光景も、彼の見る世界は黄色の神々しいばかりの光にあふれており、瞬時に変化していく世界を追いかけて追いかけて筆を運んでいる感じがしました。
ゴーギャンが「筆をそっとおいて描くべきだ。君の絵はまるで絵具で塗り固めているようだ(記憶では)」というのに対して、ファン・ゴッホはルーブル美術館で見たベラスケスの王女マルガリータ・テレサ、ゴヤの絵画を思い出して、「過去の偉大な画家は正確に素早く筆をおいている」
ここで、「メデューズ号の筏」(1819年、ジェリコー、ルーブル美術館)がクローズアップ。この絵は先日見た映画ホワイト・クロウでも描かれていましたが、ヌレエフが熱心にみていた絵でした。
また、今回出てくる絵画は画家でもあるシュナーベル監督がワークショップを開いて制作したものだそうです。なんか微妙に違うなぁと思いながら見ていましたが、やっぱりそうでした。
最後、精神病院から退院する際、神父にファン・ゴッホが自分の立場をイエス・キリストに例えていうところがあります。
「僕はイエスのようなものだ。イエスも死後、数十年たってから認められた。(略) イエスは民衆によって殺された。ピラトは彼を救おうとしたが、民衆がイエスを殺すように要請したんだ」
これを、1988年「最後の誘惑」でイエスを演じたウィレム・デフォーが言うんです。当時、マグダラのマリアとの関係を赤裸々に描き出したことで、話題になりました。そのキリストを演じた彼がいうセリフなので、しんみり感じ入りました。
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また、映画では最新の情報も盛り込んでいます。2016年に見つかった「カフェ・ド・ラ・ガール(Cafe de la Gare)」の帳簿に描いた絵の顛末や自殺という定説が、最近の自殺ではなかったという説も盛り込んで映画は終わります。
精神を病んでいたというのが定説ですが、映画を見て、実は時代を間違えて生まれてきたような、そんな気がします。異質なものを認めない偏狭さ、自分の偏狭さに気づかないことの愚かさ、そして、それが生む暴力の醜さをしみじみ考えたことでした。
1888年にファン・ゴッホに石を投げた人達、1890年以降彼が認められたことについて、自分達のことをどう思ったんでしょうね。そもそも帳簿自体が130年たって発見されたことから考えると、あまり関心がなかったのか…。それとも、自分の愚かさを振り返りたくなかったのか…。
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