約束の二年
「本当に――約束の二年でオープンさせたわね」
グラスを片手に、伊達木社長が微笑みながら天野次長に声をかけた。

「はい。伊達木社長、そして湯村社長をはじめ、皆さんのご協力のおかげです」
天野次長は深々と頭を下げ、その表情には達成感と安堵が交錯していた。
「千﨑さん、いい部下をお持ちでうらやましいわ。……お宅にはもったいないから、うちに来てもらうことでよろしいわね?」
伊達木社長の“作り真顔”に、周囲はどっと笑いに包まれた。
「絶対だめですよ、伊達木社長」
千﨑部長が即座に笑いながら返す。
「でもね、天野次長は昇格させるべきよ。もっと権限を与えて、思いきり活躍してもらわないと」
「分かってますよ、伊達木社長」
千﨑部長はそう言うと、伊達木社長が差し入れた高級ワインをぐいと飲み干した。
グラスの縁に映る赤いランタンの輝きが、オープン前夜の祝賀ムードを一層引き立てた。
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