フォーラム終了
「これほど中身の濃いフォーラムやシンポジウムは、沖縄のOISTでの天野次長の講演以来じゃないですかね」
千崎部長の声に振り返ると、彼がいつの間にか背後に立っていた。
「とにかく、二人ともお疲れさまでした」
「私も非常に良かったと思います」
成瀬次長がにっこりと応じる。
オフィスに戻ると、天野次長と大杉主任はすでに帰り支度をしていた。
「お疲れさまでした」
ねぎらいの声に、俺たちは軽く頭を下げる。
そのとき、大杉主任がニヤリと笑って口を開いた。
「千葉理事、本当に山本副部長の同級生なんですか? 副部長とは、ずいぶん差がついちゃってますけど」
俺は苦笑しながら肩をすくめる。
「まぁ、高校時代から差はあったけどな。40年も経つと、その差は恐ろしいほど広がる。……でも今でも『千葉っち』と呼んでるけどな」
オフィスに笑い声が広がった。
その明るさが、張り詰めていた空気を一気に和らげていく。
「じゃあ、みんなで串カツでも食べに行きましょうか」
千崎部長がにこやかに声をかける。
「行きます! ただし、部長のおごりで~」
大杉主任がすかさず茶化す。
「もちろんおごりですが、副部長と折半でね…」
「勘弁してくださいよ」
「冗談冗談、冗談です」
天野次長が笑いながら手を振る。
「じゃあ、さっさと行きましょう」
次の瞬間、オフィスの空気が一気に軽くなる。
フォーラムの緊張と興奮は、温かな日常の笑いへと溶けていった。
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