本題に入る
だが、いつまでも思い出話に浸ってはいられない。
「さて――今日の本題に入ろうか」
俺は背筋を正し、声に力を込めた。
「成瀬代理、説明を頼む」
成瀬代理が資料を開き、淡々と企画を説明していく。
関西の経営者や市民向けのカーボンニュートラル・フォーラム。
その意義、地域社会へのインパクト、そして――基調講演を千葉理事にぜひお願いしたいこと。
千葉理事は黙ったままスマホを取り出し、眼鏡をずらしながら予定を確認している。
部屋の時計の針が響く。秒針の一音ごとに、心臓が早鐘を打つようだった。
やがて彼は顔を上げ、口を開いた。
「……その期間は、海外出張もないし、日曜日であれば会議も入っていない。大丈夫だと思う」
「本当か!」
思わず声が上ずった。
千葉理事は笑みを浮かべ、ソファに背を預ける。
「ただし、山ちゃん。俺は忖度しないぞ。壇上に立ったら、容赦なく“現実”を語るからな」
「もちろんだ。俺たちが欲しいのは、本物の言葉だけだからな」
成瀬代理が横で深く頷いた。
「ええ。甘い幻想ではなく、関西の市民や経営者に“現場の声”を届けることが、フォーラムの目的です」
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