まさかの対面
四菱総合研究所の本社が入るビルは、永田町の国会議事堂前駅に直結していた。
地下1階の総合受付を抜け、無機質な廊下を進んで応接室へと案内される。
成瀬代理と二人、ソファに腰を下ろし、緊張を胸に待つ。
やがて――ノックの音。
「お待たせしました」
ドアが開き、背の高い細身の紳士が姿を現した。眼鏡の奥の瞳は鋭く、どこか神経質そうにさえ映る。
俺たちは立ち上がり、名刺を差し出そうとした。
「大阪ビジネスコンサルタンツの――」
その瞬間だった。
名刺を渡しながら顔を見た途端、頭の中が真っ白になった。
驚きに固まったのは、向こうも同じだった。
わずかな沈黙を破ったのは、彼の方だった。
「……山ちゃん、か?」
「え……千葉っち?」
信じられない。
四菱総合研究所の研究理事、千葉誠一氏。
それは、和歌山西高校時代のクラスメイト――千葉君だった。
「高校卒業以来、40年ぶりか。まさか、こんな場所で会うとはな」
「いやあ、千葉っち、全然変わってないな!」
「山ちゃんこそだよ。すぐ分かったよ」
旧友との再会に、張りつめていた空気が一気にほどけていく。
成瀬代理がようやく口を挟んだ。
「お二人、同級生だったんですね」
「そうそう。クラスも一緒で、こいつは硬式テニス部の部長で、学級委員長。成績も優秀で、大阪大学工学部に現役合格したんだ」俺は一気にまくしたてた。
「いやいや、昔の話だよ」
しばし、懐かしい日々がよみがえる。家族のこと、同級生の消息――時間が逆流したように会話が弾んだ。
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