壮大な実験室
「総務課の馬渡です。まずは簡単に研究所内を見学いただきます」そう言うと、来訪者用のヘルメットを差し出した。
――ここから先は、まさに「カーボンニュートラルの壮大な実験室」だ。

案内された敷地内を歩くたび、足元に重低音が響く。巨大なタービンの試運転だろうか。地響きのような振動が、胸の奥まで突き抜けてくる。
「こちらが『高砂水素パーク』です」
制服姿のスタッフが誇らしげに指し示す先に、ガラス張りの建屋が見えた。中では銀色に輝く装置群が整然と並んでいる。
「水電解装置による水素製造から、燃焼実験、発電利用まで。すべてを一貫して実証できるのは、世界でもここだけです」
成瀬代理が小声で付け加える。
「単なる研究施設じゃありません。ここは未来の“社会インフラの試金石”なんです」
俺はガラス越しに装置を見つめた。
――これだ。この迫力をどう伝えるかが、フォーラム成功のカギになる。数字や理屈ではなく、心を動かす“実例”。それを提示できれば、参加者の意識は確実に変わる。
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