また来るね富山
――翌日。
午前中は富山市ガラス美術館と老舗の池田安兵衛商店を観光し、二人は富山駅から新幹線に乗り込んだ。


車内では名物の鱒寿司と鯖寿司を広げる。
「旨いですね、コレ」大杉主任が口いっぱいにほおばる。
「ほんと、富山はいい所だったわね」天野次長も感慨深げに言った。
「そりゃ、ニューヨーク・タイムズが“2025年に行くべき場所”に選ぶはずですよ」
大杉主任が最後の一切れを平らげると、天野次長は会社のLINEに「帰路につきました」と報告を送った。
そのとき――。
「あっちゃー!」大杉主任が声をあげた。
「どうしたの、大杉さん」
「氷見牛、食べそこないましたよ、次長!」
「まあ、いいじゃない。次回のお楽しみってことで」
数分後、また声が上がる。
「あっちゃー!」
「今度は何?」
「お土産、買うの忘れました」
「そんなことだろうと思って、池田安兵衛商店で「反魂丹(はんごんたん)」を皆さんに買っておきました。」

「死者を蘇らせる霊薬じゃ~」と大杉主任がふざける。
天野次長が思わず吹き出す。
そして列車は静かに大阪駅のホームへと滑り込んだ。
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