開けた視界
「……あった。エンヨウ漁業協同組合 主査・宮沢幸正」
「宮沢さん……あ! 西日本魚市で“サバしゃぶ”をご馳走してくれた方ですよね?」
「そう。確かあのとき……長崎海洋大学の客員教授やってるって話、してなかった?」
「してましたしてました!」
天野は即座に名刺の番号に発信した。
「はい、宮沢です」

「あっ、宮沢さん! ご無沙汰しています。大阪OBCの天野です」
「おや、天野さん。お久しぶりですね。どうされました?」
「実は、来月の中ごろに長崎へ伺う予定がありまして……“ながさきオーシャン・エコノミー”について、何か情報いただけないかとお電話を…」
「ご存じも何も、“ながさきオーシャン・エコノミー”は長崎海洋大学の矢野教授が中心になって動かしているプロジェクトですよ。私たちも技術面でがっつり協力しています」
「えっ! そうだったんですか! それなら……急で申し訳ないのですが、矢野教授とお会いする機会、作っていただけないでしょうか?」
「矢野先生なら、新長崎漁港の近くにある研究施設にだいたいいらっしゃってるはずです。携帯に電話してみますね」
「ありがとうございます! 本当に助かります」
受話器を置いた瞬間、天野の胸に“視界が一気に開けた”ような感覚が広がった。
これまで曇っていた空に、陽光が差し込むように。

そして翌日の午前中は、驚くほどスムーズに、すべてが決まっていった。
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