明日のご予定は?
仕事の話がひと段落すると、話題は自然とプライベートな方向へと流れていった。
誰かが気を遣うわけでもない、心地よい時間がそこにあった。
そして、甘さ控えめの梅椀(しるこ)がそっと運ばれてくる。
橋本社長が軽く一礼し、コースの終わりを静かに告げた。
外はすっかり夜の帳に包まれ、料亭の軒先では、雨のしずくが優しい音を立てていた。
「さて、今夜は楽しすぎたわね」

食後の余韻をまといながら、伊達木社長がぽつりとつぶやいた。
「明日のご予定は?」
問いかけに、天野次長が丁寧に答える。
「レンタカーで佐世保市役所に向かって、医療法人Hの方々とディスカッションの予定です」
「テーマは?」と伊達木社長が続けて尋ねる。
「『CCRC』についてです」と、大杉主任が略称のまま答えた。
「CCRCですって? それ、おもしろそうね」
伊達木社長の瞳が一気に輝きを増し、声もひときわ明るくなった。
「実はね、明日の予定も、全部キャンセルになったの。だから、あなたたちに――ついて行っちゃおうかな、なんて」
「えっ、それはちょっと困ります。先方にもご都合がありますし…」
天野次長が戸惑いながらも丁寧に断ろうとすると、伊達木社長はおかまいなしにスマートフォンを取り出し、手慣れた様子で画面をタップし始めた。
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