地域戦略部には戦略が無い(118) | cb650r-eのブログ

cb650r-eのブログ

ブログの説明を入力します。

料亭「橋本」

 

急な雨の影響でやや渋滞したものの、20分ほどで料亭「橋本」に到着した。

 


玄関では、橋本の社長自らが出迎え、3人を一旦待合室へと案内した。



伊達木はハンドバッグを椅子に置き、名刺入れを取り出すと、天野次長の前に立った。

「申し遅れました。私、Forest Trust株式会社で社長をしております、伊達木と申します」

 

 

「大阪ビジネスコンサルタンツの天野です」
天野は名刺を受け取り、ふと視線を落としたその瞬間、心の中で思わず声を上げた。

(Forest Trust……あの、グローバルに不動産とホテル事業を展開している、あの会社の……)

表情には出さず、落ち着いた口調で応じた。

「雑誌の『週刊プラチナ』や『経営Woman』で、社長の記事を拝見したことがあります」

「まぁ、あんなの、ずいぶんカッコよく書かれてるけど……本物はもっとカッコいいのよ」
伊達木はウィンクを交えて冗談を飛ばし、すぐに「冗談よ、冗談」と笑いながら軽く手を振った。

やがて、3人は2階の個室に通された。

そこに橋本の社長が再度現れ、丁寧に頭を下げた。

 

「本日は、卓袱(しっぽく)形式でお食事を楽しんでいただきます」



「え、卓袱料理じゃないの?」と伊達木が反応する。

「はい、実は“卓袱料理”という名称自体、正確には料理名ではないんですよ。たとえば“フランス料理”のように、食事の形式やスタイルを指す言葉です」

「なるほど」

「長崎は新しいもの好きな土地柄。昔から中国料理と日本料理が互いに影響し合い、一つの大皿を皆で取り分ける文化が自然と育まれました。この“卓袱形式”は、朱塗りの円卓を囲み、身分の上下にかかわらず平等に食事を楽しめる合理的な形式として、特に町人文化の中で花開いたのです」

「すごく勉強になります」と大杉主任が素直に感嘆した。

 


このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。