地域戦略部には戦略が無い(114) | cb650r-eのブログ

cb650r-eのブログ

ブログの説明を入力します。

長崎の「淳ちゃん事件」とは….

 

「では最後に、長崎の寿司文化にまつわる“事件”を一つご紹介しましょう。地元では“淳ちゃん事件”と呼ばれているんですが……」

「淳ちゃん事件?なんですかそれ」
と大杉主任が食いついた。

「もう半世紀以上前の話だそうです。転勤で長崎に引っ越してきた、東京育ちの小学校低学年の男の子――名前を淳司くんといいます。その子がある日、家族と一緒に寿司屋に行って、大好きな“鉄火巻”を頼んだんです」

「うんうん」
と大杉主任。

「ところが、出てきた鉄火巻を見て、彼は泣き崩れてしまった。“ちがう、ちがう”と」
と亀田主任。

「……え、なにそれ。なんで?」
と首をかしげる大杉主任の目の前に、1枚の写真が差し出された。

 

「……白い鉄火巻?」
と目を丸くする。

「なるほど……ブリ、ハマチ、ヒラス(ヒラマサ)というところですか」
と天野次長は会議室の天井を見ながら、何かを思案している様子。

 



「大杉さん、長崎では、10年くらい前までは、そもそも“マグロを食べる”という習慣自体があまり無かったのよ」
と天野次長が語り出す。

「へぇ、そうなんですか」

「今では、私の実家がある対馬でもマグロの養殖が盛ん。でも、ブランディングして都市部に出荷するのがほとんどで、地元で日常的に食べられてるわけじゃないの」

「マグロを食べない長崎……ちょっと意外ですね」

その時、天野次長がふと表情を引き締めた。

「亀田さん……私たち今、とんでもないことに足を突っ込みかけてる気がしませんか?」

「そうですね。これはもう――日本、いや世界を巻き込む“海洋資源未来図”ですよ」
と、亀田主任も冗談めかしながら、どこか確信めいた口調で応えた。

「次回、長崎を訪問される際は、『ながさきオーシャン・エコノミー』の代表、矢野先生をご紹介しましょう。きっと面白い話が聞けますよ」

「ぜひお願いします」
と天野次長が力強く答えた。

こうして、その日のすべての予定が、穏やかな夕方の空気のなかで締めくくられた。


このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。