地域戦略部には戦略が無い(84) | cb650r-eのブログ

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石垣海上保安部

 

午後からは、石垣海上保安部の視察だった。

出迎えてくれたのは、副部長の石橋氏。帽子のつばを軽く押さえながら、遠くに停泊する巡視船「とかしき」の方をじっと見つめていた。その背中には、海の男特有の静かな緊張感が漂っている。

 

「ようこそお越しくださいました。こちらへどうぞ」

石橋副部長の案内で、俺たちは巡視船「とかしき」の内部をくまなく視察した。
写真撮影は、当然ながら厳禁だった。

 



船内はどこまでも整然としていた。無駄なものが一切ない。計算し尽くされた動線、磨き上げられた金属の手すり、そして、静寂の中に満ちる緊張感。

「正直、緊張感が肌で伝わってきます」
千﨑部長が、ふだんの飄々とした口調を封じ、低く言った。

「あの海域で、毎日のように任務にあたっている職員の皆さん。その責任感と集中力には、ただただ頭が下がります」

「やはり、近隣国の海上の動きは――」

部長が言葉を濁すように切り出すと、石橋副部長は、ほんの一瞬、視線を海にやった。

 

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。