俺が、俺が。どうぞ、どうぞ。
その日の朝。週初恒例の定例ミーティングが始まった。
各自が今週の担当案件について報告を終えたところで、千﨑部長が、どこか連絡事項のような口調で言った。
「沖縄の大学から、講演スピーカーとしての緊急登壇依頼があった。ただ、準備期間が短いこと、言語が英語であること、テーマが『女性の活躍、ダイバーシティ&インクルージョン』という進化系の内容であることから——今回は見送ることにする」
俺も、隣に座る成瀬代理も、「まぁ、妥当な判断だな」とうなずき合った。
ミーティングルームに、少しの間だけ静寂が流れた——その時だった。
「あの……私に、やらせてくれませんか。いえ、私が、やります」
場の空気を切るように、天野次長がきっぱりと言い放った。

続いて、大杉主任も手を挙げて発言する。
「私が、次長をサポートします」
と、静かだが力強い声で言った。

おいおい……と、俺は思わず成瀬代理と目を合わせる。
「大丈夫か、これ……?」
互いに目線で問いかけるようにして、固唾をのんだ。
「……もう少し、詳しく聞かせてください」
千﨑部長のその一言で、終わるはずだったミーティングは、まさかの延長戦に突入した。
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