オートバイをもう一度(115) | cb650r-eのブログ

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上海市武昌路301号。

 

5分ほど歩くと、武昌路301号があった。俺は、そこで足がすくんだ。「林社長、ありましたね」「ああ、年齢的に覚えているはずはないんだが、懐かしい気持ちがする。」 

 

しばらくの沈黙の後、後ろからスッと華さんが出て来たかと思うと、いきなり301号の扉を強くノックした。「すみません!だれかいませんか?」と日本語で言っている。ちょっと間があり、中年の中国人男性がドアから顔を出した。

 

そこで、俺は片言の中国語で言った「突然すいません。実はこちらの日本人男性は、ここで生まれたそうです。」通じたかどうかは分からないが、奥さんらしき人も出てきて中国人夫婦は最初は硬い表情だったが、やがて笑顔になった。恐らくだが「昔ここら辺は日本人が多く住んでいたことは聞いている」みたいなことを言っている。

 

俺は片言の中国語を続けた。「家の中を少しだけ見せてもらえませんか?」と言うと、「好的(いいよ)」と返してくれた。林夫婦は、扉の内側に招かれ、その間、俺と華さんは扉の外で待っていた。すると、華さんが俺に小声で話しかけてきた。「山本さん、百元札(約1500円)ある?」「ああ、百元札なら何枚かありますよ。」「じゃあ、百元、いや念のため300元借りていい?」「いいですけど、何するんですか?」「任せといてよ。」と言うと、300元を左右のポケットに入れ、林夫妻が戻るのを待っていた。 

 

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