ご夫妻の上海訪問の本当の目的とは…。
上海蟹を堪能いただいたあと、待ってもらっていた謝さんの車で、外灘(ワイタン)の夜景を見に行った。
「緑の三角の屋根が和平飯店(ピースホテル)です。川の向こうの高いタワーが東方明珠塔です。その横には、数年後に世界で最も高い森ビルが建つ予定です。」と俺は簡単に説明した。奥様と華さんは、夜景の美しさを楽しんでいた。
しばらくして、林社長が俺の所に近づいてきて声をかけた。「実は山本、今回の上海旅行には大事な目的があってな。実は私は、上海生まれなんだ。私の実家は当時としては珍しい洋菓子店をやっていてね。戦争で、日本国内では砂糖がなかなか調達できなくなって、上海に疎開してきたんだそうだ。その家の住所がこの外灘の近くだと思うが、『武昌路(ぶしょうろ)301号』。ここが俺の生まれた場所だ。実は、この生まれた場所を妻と一緒に、一度見ておきたいと思い夫婦で上海に来た。 山本。明日、私たち夫婦を、その武昌路301号に連れてってはくれないだろうか。」
すると、奥様も近づいてきて「山本さん、お願いします」と言った。その後ろから、華さんが無邪気に「私も行きま~す」とはしゃいでいる。すると奥様も「華さんも一緒に来てちょうだい」と言った。
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