オートバイをもう一度(109) | cb650r-eのブログ

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上海空港名物か

 

このままスルーするのもアリかな、なんて一瞬よぎったが、さすがに見て見ぬ振りはできない。「林社長、少々お待ちください。」と告げ、揉めている二人のもとへと足早に向かった。

「どうしましたか?私は日本人駐在員ですが……。」と話しかけると、女性が困惑した表情で振り返り、声を張り上げた。
「どうもこうも、このタクシーの運転手よ!行き先を書いたこの紙を見せたら、一旦積んだトランクの荷物を下ろして、乗せないって言うの!」

運転手は全力のジェスチャーで怒りをアピール中。しかし、その隣で女性の怒りはその倍増しで加熱していた。

俺は状況を見てピンときた。これは…上海虹橋空港あるあるの「長時間客待ちしてやっと乗せたのに近距離かい!」の巻だ。

「あー、それはですね、説明すると長くなっちゃうんで…。ここでタクシーに乗るのはやめておきましょう。」
「ちゃんと並んで待ってたんですよ!なんで乗れないの!」と女性が抗議するが、俺は「まあまあ、ここで揉めても勝ち目はありませんから」となだめ、女性を林夫妻が待つ出口付近へと連れ戻した。

ふとタクシーの方を見ると、運転手のもとには公安が駆け寄り、罰金を課している。「あ、これもあるあるだな」と一瞬思いつつ、女性に問いかけた。
「どこまで行きたかったんですか?」
すると彼女は、小さな紙を差し出してきた。そこにはこう書いてある。
“会場:虹橋開発区 上海商城(マーケット)、宿泊:揚子江飯店(ホテル)”

「なるほど……。言いにくいんですけど、国際線のタクシーは長距離を期待してるんですよ。会場もホテルもここから近いので、運転手が嫌がったんだと思います。」

「そんな馬鹿な話があるの?」と女性が信じられない様子で返す。
「まあ、ここは中国なんで。こういうことも普通にありますよ。ちなみに、バブル期の東京のタクシーはもっとひどかったらしいですけどね。」

俺はそう言ってから、案内するように続けた。「1階の国内線のタクシー乗り場へ行ってみてください。ただ、国際線よりも待ち時間が長くて、客待ちのタクシーも少ないんですけど…」

そう言い終えたその時、林社長の奥様が急に口を開いた。
「山本さん、その女性が行きたい揚子江ホテルっていうのは、私たちが泊まるホテルから遠いの?」

 

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。