林ご夫妻上海到着
上海もすっかり秋らしくなった。10月のある日、俺は上海虹橋(ホンチャオ)空港の2階、国際到着ロビーにいた。林元専務の顔はもちろん知っている。だから、「熱烈歓迎」の紙を掲げるような派手な出迎えはいらず、到着ロビーでひとり、林社長夫婦を待っていた。
しばらくすると、懐かしい顔の男性と小柄で上品な女性が姿を現した。「林社長、お待ちしておりました。」俺が声をかけると、林社長はにっこりと笑って言った。
「おお、山本!久しぶりだな。紹介しよう、こちらは妻のヤス子だ。」
「山本さん、はじめまして。2日間、どうぞよろしくお願いします。」
奥様は上品な笑顔でそう言った。俺は笑顔を返しつつ、「ようこそ上海へ!車を待たせておりますので、そちらへまいりましょう。」と案内を始めた。
虹橋空港の2階から、謝さんが待つ駐車場へ向かおうとしたその時、ただならぬ雰囲気が漂ってきた。到着出口にはタクシーを拾おうとする人々が長蛇の列を作っていたが、その中でひときわ目立つ騒ぎが。
「なんで乗せんとねー!あんた、ふざけとっと?」
振り返ると、一人の女性がタクシー運転手と大声で揉めている。最初は、上海の若い女性が喧嘩でもしているのかと思ったが、耳を澄ますとどうも違う。九州弁――いや、間違いない、日本人だ。それも、九州から来た女性らしい。
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