どうする、小川部長。
「はい、山本です。ご無沙汰しております。」 「要点だけ言うからよく聞いてくれ。大阪貿易の香港支店が危機に陥っている。まず、手元の米ドル資金が底をついた。親密にしてくれた元住銀行香港支店も自行の対応で精一杯で、外貨資金の融通を断ってきた。香港支店の外貨資産、アジア各国の政府系ボンド(債権)、財閥系のボンドもほぼ全てデフォルト(債務不履行)だ。元住商事、カネミツにもお願いしたが、どこも自社の保身で手一杯との返事だ。昨日、日曜日に臨時役員会を開催したが、万策尽きた。
ただな、その時、なぜか、小川とお前の顔が浮かんだ。エビデンスは無いが、お前らなら、この危機を突破できるかもしれないと思ったんだ。 全て、小川と山本の二人に任せる。手法も問わない。いかなる結果になっても責任は私がとる。期間は1か月だ。」 「わかりました。」
電話を切ると、平賀さんが口を開いた。「1か月間行動自由。経費は全て上海支店持ちだ。任せるぞ。」 俺はすぐに大阪の小川部長の携帯に電話した。 「山本か。かかってくると思ったよ。ちょっと前に田沼部長から電話があった。今週の金曜日に東京分室に集合だ。」 「分かりました。」
その少し前、小川部長はある人に電話していた。 「おお、本店営業部長にご栄転とは聞いていたが…何事だ。」 「榊原部長、折り入ってお話があります。今週の金曜日お時間をいただけませんでしょうか。」 「なんだ、転職の相談か?お前ならウエルカムだぞ、小川。」 「いえいえ、個人的なお願いではありません。大阪貿易をお救いいただきたい。」 「ほぉ、何となく察しはつかぬわけでもないが、金曜日に聞くとしようか。」
このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。
