オートバイをもう一度(86) | cb650r-eのブログ

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香港上陸。

 

さて、いよいよ香港である。世界一着陸が難しいと言われる香港カイタック空港。九龍城上空を超低空で降下していく。
香港国際空港には、湯村支店長が社用車の古い日産セドリックで迎えに来てくれた。湯村支店長は当社でも指折りの海外通で、英語が流暢だ。オールバックに太い眉毛が特徴的で、陰では「香港マフィア」と評されている。

大阪貿易の上海支店とは全く違い、香港支店は高層ビル群の中の16階にある。上海駐在事務所とは異なり、支店として活動しているが、貿易業務は全く行っていない。つまり、外貨の運用、それも外国債券の購入を主な業務としているのだ。

湯村支店長が言った。
「山本君、宿泊はどこのホテルだ?」

「シャングリラホテルです。」

「あそこはいいね。本物の五つ星だよ。あそこのアフタヌーンティーは最高だ。俺もよく行くよ。今夜は香港の旨いものが食べられる、日本企業専用のメンバーズレストラン『日本倶楽部』に連れて行くぞ。そこの酔っ払いエビ(老酒で生きたエビを蒸し焼きにしたもの)やチーズフォンデュ、豚の丸焼きが絶品だ。もちろん、ほかにも旨いものだらけだ。」

湯村支店長は続けた。
「あと、山本、噂で聞いてるぞ。金融機関の外為部門しか検査に入らない大蔵省国際金融局検査が、特別モニタリングとして大阪貿易の東京支店に検査に入った時、担当の検査官を完膚なきまでにやり込めたらしいじゃないか。お前のせいで、96年に橋本首相が金融ビッグバンや外為法の大幅改正をせざるを得なかったって、もっぱらの噂だぞ。」
 

「そんなことあるわけないじゃないですか。」
「そりゃそうだ、ははは。」

 

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