人事部副部長。
さて、ご褒美の海外視察も終わり、東京分室への出勤である。手には重い袋を抱えている。当時日本で大ブームとなった中国の「痩せる石鹸」と、香港土産の「タイガーバーム」（ハッカ油クリーム）を人数分持参していた。「痩せる石鹸」は特に女性社員に喜ばれたが、男性社員にも「奥様か愛人へのお土産にどうぞ」と言葉を添えて手渡した。もっとも、痩せる石鹸もタイガーバームも、どちらも科学的な根拠はない。ただの気持ちの品だ。
そんなこんなで、俺の初めての海外視察は滞りなく終了した。視察報告書をチャチャっとワープロで作成し、次長と支店長に回覧した。すると支店長から、「だいぶ日本語が上達したな」と嫌味を言われたが、気にせず人事部宛てにコピーを社内メールで送付した。
さて、その人事部の上釜副部長が、上海の平賀支店長に俺の視察後、電話をかけたそうだ。
「山本が大変お世話になりましたね。どうでしたか？ 少しは見込みがありますかね？」 「そうですね、副部長。山本のやつ、上海は合うかもしれませんね。ただ、合いすぎて、ひょっとすると『日本に帰らない』なんて言い出しかねませんよ。」 「そうですか。でも、その点は心配いりません。あいつは、オートバイばかなんですよ。」 「そうでしたね。」 「バイクなしの人生なんて、2年が限界ですよ。次の上海の副支店長は山本で行きましょう。お願いですが、平賀支店長には、グローバル人材として山本を育てていただきたいと思っています。どうぞ、よろしくお願いします。」 「分かりました。できる限りやってみます。」
上釜副部長と
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