「CB650R e-clutch」って、何がいいんでしたっけ?
西伊豆へ行こう!
6月に入り、松岡支店長と小川次長が動き出した。取引先回りだ。その目的は、もちろん取引解消にほかならない。
6月下旬の金曜日。小川次長から、いつもの「バー・エバンティ」に誘われた。
店の雰囲気BGS ※音量注意
普段、仕事の話をすることは少ないが、この日は俺から切り出した。
「どうですか、お取引の反応は。」
小川次長は、いつもの『ジン・アンド・イット』を一口飲んでから答えた。
「それがなぁ。ほとんどの先が、『やっぱりそうですよねぇ』としか言わない。」
「はぁ。」俺は、小川次長の顔を下から覗き込むように見た。
「先方も、ほとんどの会社で担当が代わっていて、なんでこんな意味のない取引を続けてるのか、ずっと疑問に思っていたらしい。」
「つまり、お互い意味もわからぬまま、長年続けてきたと…。」
小川次長は頷いた。「まぁ、そういうことだな。」
「わが社も、『東京バブル』がはじけたってことか。」
「その通りだ。」
その後、話題が変わる。
「さて、7月からは新規先を回るぞ。まず、最初は初芝病院だ。」
「品川にあるあの大きな病院ですか? 外為なんて関係なさそうですけど。」
「そうだ。初芝病院の黒田副院長とは、慶応大学の野球部で同級生なんだ。医学部で頭も切れるが、サードで4番を打っていた。」
「ちなみに次長は?」
「俺はピッチャーだ。」
「へぇ~、すごいですね。」
「ところで、日曜は天気もいいぞ。どうする?」
「西伊豆なんてどうです?」
「いいな。本わさびで日本蕎麦だな。」
「渋いですね。」
「よし、決まりだ。」
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