オートバイをもう一度(26) | cb650r-eのブログ

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大阪、国際業務部勤務 最終日

 

 さて、今日は私の国際業務部での最終出勤日である。

 私は、意を決して取手に最後の挨拶をした。「あなたから本当に多くのことを学ばせていただきました。ただ、すべて反面教師としてでしたが。」

 夕方、部長室に呼ばれた。「山本、ご苦労さんだったな。お前にとっては、赤子の手をひねるより簡単な事案だったな。」と、田村部長は穏やかな口調で続けた。「さて、取手だが、あの貿易実務経験と知識、そしてお客の懐に入るその能力。このままつぶしてしまうのは忍びない。そこで、西日本トップクラスの実績を誇る山口県の門司港支店の課長代理として、君と同じ4月1日付けの人事異動にかけることにしたよ。山本、それでいいな?」 

 「もちろん、異議はございません。」と私は答えた。

 「そうか、これで君もいよいよ東京支店への異動だな。君の業務は全て、同期の吉富に引き継ぐ。あいつは、こっちでしっかり鍛えるから安心しろ。」

 「わかりました。よろしくお願いします。」と私は言った。

 「ところで、壮行会はどうする?伊丹空港か?大阪駅か?」

  国際業務部には転勤者を駅や空港で見送る(そこで胴上げされる)慣例がある。

 「いえ、東京にはバイクで行くことにしますので、壮行会はなしでお願いします。」
 「バイク?東京まで?」 「ははは、いかにもお前らしいな。」
 「わかった。独身寮にはバイクぐらい停めるスペースはあると思うが、寮長の小笹に私からもよろしく言っておく。小笹は若いが、東京支店をすべて把握している。きっと君の力になってくれる。」
 「山本。改めて言わせてもらう。3年間よく頑張ったな。」田沼部長が言った。

 「ありがとうございます。東京支店では必ず成果を上げて見せます。」

 花束や餞別の品のネクタイなどを両手いっぱいに抱え、国際業務部の全員が見送る中、エレベーターに乗り込んだ。今福課長が、「では、山本君の前途を祝して『バンザーイ!』『バンザーイ!』『バンザーイ!』」と声を上げた。最後のフレーズは、エレベーターのドアが閉まると同時に音が途切れた。

 大阪市西区にある独身寮の部屋はすでに片付けを終え、部屋の鍵は寮母さんに返却済みである。3年間、おいしい朝飯や夕飯を作っていただき、感謝の気持ちでいっぱいだ。

 今日は、和歌山市関戸の、実家に帰る。1週間後の4月1日木曜日が東京支店の初出勤日である。

 

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