オートバイをもう一度(8) | cb650r-eのブログ

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1990年4月2日、辞令交付


 本店3階の大会議室。ステージ正面には日の丸が掲げられ、その上には「平成二年度入社式」の看板がバトンに吊り下げられている。君が代の斉唱が終わると、堀崎社長の祝辞が始まった。堀崎社長は元住銀行の元役員で、フランス・パリ支店長を務めた経歴を持つ。酒に酔うとシャンソンをアカペラで歌うらしいが、幸運にも私はまだその場に居合わせたことはない。

 1986年に施行された男女雇用機会均等法のおかげで、今年は4年制大学を卒業した女性も総合職として採用されている。しかし、男性31人に対して女性はわずか3人。その中の一人、阪大卒の河合さんが新入社員代表として挨拶を行った。彼女は4年ほど勤めた後に退職し、苦労して弁護士になったらしい。最近、地元で起きた未成年者の重大事件を担当する弁護士として、夕方のニュースに映っているのを見かけた。

 新入社員の辞令交付は五十音順で進んだ。私は最後から2人目で、最後は吉富 太郎君。「山本 直太郎、本部、国際業務部 試用社員を命ず」——上釜副部長がそう読み上げた。式典が終わり、上釜副部長から一人ひとりに辞令が手渡された。私に辞令を渡す際、「今回は、執行猶予つきにしとくか……。」とニヤリとしながら手渡してきた。

 午前中は別館の会議室で、外部講師によるマナー講座が行われた。名刺交換の仕方、エレベーターの使い方、タクシーの乗り方、そしてお酌の作法まで、社会人としての基本所作を一通り教わった。

 

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